勝利の宴、有難迷惑な黒幕
戦闘はあっさりと終結した。
突然の奇襲と隊長であるグラムが退却の際に行方不明になったこと。
兵士達の反乱参加の罪を不問とする提案により、暫定的に立った代表が降伏を受諾したのだ。
結局討伐軍は総司令官一人と幾人かのの兵士が戦死しただけでほぼ無傷で勝利を手にしたのだった。
「それではあの救援はオルド様が率いてくれたのですか?」
素っ頓狂な声を上げてムランが驚く。
「はい!他の将軍方があまりにも柔弱なものでしたから、私が暫定的な司令官となって率いてきたのです。このようなときにこそ我が家の威光を振りかざすときだと判断しました!」
顔を赤くして熱っぽくオルドが喋る。
右手にはなみなみと酒が注がれた杯を持っている。
今はムランの父であるトールの邸で勝利の宴の最中であった。
反乱軍が降伏し、捕虜になった者達の処遇やその他の戦後処置もあらかた終わり、役目を終えたムランたちは元の領地へと帰還することになった。
その際に、非常用の物資まで持ち出してくれたトールに改めて礼を言いたいので、自分も一緒に帰還したいといってオルドも供に戻ってきたのだ。
それに感動したトールがささやかながらの宴を催してくれた。
「そんなことがあったとは……改めて救援の礼を言わせていただきます。真にありがとうございました」
居住まいを正してムランが頭を下げて感謝を示すと、オルドはムランの手を両手で包み、しっかりと彼の顔を見据え、
「何を言われるのですか!副官である貴方を助けるなど当然……いえ、仮に貴方が居なくても私はかの国の為に立ち上がってくれた義勇の民達を見捨てることなどしなかったでしょう……」
頭をフラフラさせながらもしっかりとした口調で宣言するオルドにムランが何か気恥ずかしそうな顔をして照れる。
「そんなことより貴方の功績がうやむやになってしまったことのほうが問題です。申し訳ない」
「いえ……そちらも大変でしょうから」
すまなそうな顔をするオルドにムランが遠慮がちにフォローの言葉を入れる。
実はムラン達の功績が上層の将軍達に握り潰されてしまったのだった。
将軍達から見れば総指揮官の座と功績を若造に取られ、そのうえに副官とはいえ低い身分のムランに手柄を立てられたのでは自分達の面目が立たないということだ。
ましてや義勇兵を見捨てて先に逃亡したという事実がさらにそれに拍車をかけて、是が非でもムラン達の功績を認めることはできなかった。
オルドはその決定に不服を言ってくれた。
また意外にもガルム将軍も異を唱えてくれたが、さすがに決定は覆られなかった。
「すまなかったな、お前達の功績をあのわからずやどもに認めさせてやりたかったんだがな」
帰還する直前、自分を呼び止めたガルムがそう言ってくれたことにムランは、
「いえ、身分にあわない功績は窮屈ですので」
「そうか……ところで気は変わらんのか?」
「はい……申し出はありがたいのですが、所詮は非才の身、私には一つの街をどうにかやりくりするのが精いっぱいです」
戦の途中、ガルムの誘いをムランは断っていた。
その気持ちは今も変わらずに自分の中にあった。
たった数日の戦いに何の縁かオルドの副官にしてもらい、貴族達のメンツといやらしさを目の当たりにした。
今までの苦労やそれらを見ているとやはり自分には縁の無い世界だということに改めて気づいたのだ。
「残念だな……キッツ辺りがお前の従者達を気に入っていたようなんだがな」
「申し訳ありません……オルド様の強引な司令官就任を後押しして、救援の兵を向かわせてもらったことをオルド様から聞きました。ありがとうございます、あの時救援が来てくれなかったら今頃はここに立っていなかったでしょう」
ムランの言葉を相変わらずの威厳漂う表情で受け、
「別に気にすることではない。部下達から言い出したことだからな」
馬を進めて後ろを向く。
そのまま二人は口を交わすことなく別れたのだった。
戦場で生きる無骨なその背中を相対させて二人は振り返らずに帰って行った。
「ムラン殿……ムラン殿!」
「あっ……すいません、何でしょうか?」
「それはこちらが聞きたいですよ、急にボーっとして」
「すいません……少し考え事をしていまして」
「逃げたグラム将軍のことですか?いずれ捕まるとは思いますよ、もしかしたら今頃何処かの道端で死んでいるかもしれませんね」
「いえ……私事のことですから」
「そうですか……ところでムラン殿は中央に行ったことがありますか?」
「いいえ、恥ずかしながら領地の外へと出たことなどほとんどありませんので、ましてや中央などには……」
「そうですか!それならば私が帰還する際に一緒に行ってみませんか?旅費やら滞在のことは私が全て面倒を見ますので」
「そ、それは……大変有難いことではありますけど」
「そうでしょう!それでは明日旅立つ際に供に参りましょう、それではトール殿に許可を貰わないといけませんね」
強引な展開にムランが驚いて何も言えない間にオルドはどんどん話を進めて言ってしまう。
「い、いきなりのことですから、どうかお時間を……そ、そうだ酒が無くなったようですので誰か取りにいかせましょう」
自分の意思を無視した強引なオルドに気圧されながらもムランが話を変えようとする。
「そうですね!それでは少し小用を足してきますのでその間に決めておいてくだささいね」
返事も待たずにオルドはさっと立ち上がって宴の間から出て行ってしまう。
その有無を言わせない仕草に困り果てたムランの『あ……あっ』という言葉が宴の間で空しく消費される。
宴の間を出たオルドが廊下を進むと、スアピが石畳の壁に背中を預けて立っていた。
少しふらついた足取りでその前を通り過ぎようとすると、
「ずいぶんご機嫌じゃねえか」
貴族に対する礼など知らないかのようにスアピが話しかけてくる。
「ええ当然では無いですか!私は運命の出会いを果たしたのですから」
立ち上がったことでさらに酔いが身体に広がったのか幾分ろれつの回らない口調で、しかし目だけは何か大切な物を見るようなキラキラとした瞳でオルドが返す。
どうやら酔っ払っていることでスアピの失礼に気づいていないようだ。
「……運命?ムランのことか」
何か冷めた口調で返す。
その様子など気づかぬようにオルドは相変わらず夢でも見るような足取りで、
「そうです!彼のような才能がこんな田舎でくすぶっているなど勿体無いではないですか!供に中央に行って私の部下になってもらいますよ……ああ勿論、貴方達もまとめて面倒を見ますのでご心配なく!それにしてもまさかこんなところであのような方と出会えるとは、やはり神は正義の人間に微笑むのですね」
フフフとまるで子供が夢を語るような口調でオルドはスアピの肩をバンバン叩く。
力強く叩くその度に反動で身体が左右に揺れるが、そんなことも気にしないでそれを繰り返している。
「そういう訳にはいかねえな」
不穏な言葉にオルドが疑問の表情をする。
スアピが槍を持ち、その先を自分に向けていることに気づく。
「どういうつもりですか?そういう訳には行かないとは?それにそんな物騒な物は人に向けるものではありません」
「随分と唇が滑らかになったじゃねえか」
その指摘にオルドがはっとした顔をする。
「やっぱりな……お前が黒幕か」
「……何のことですか?私には何のことだか…」
言葉とは逆にすでに表情は苦りきっていて、明らかに今までの酔っ払いぶりは演技だったことがわかる。
それでも厚かましくシラを切ろうとする図太さにスアピもあきれてしまった。
「お前が今回の黒幕だったんだろう?村を襲わせたのも、あのいけすかねえ司令官を殺ったのも……敵さんと繋がってたのもな」
「…………」
黙りこんだことを肯定と見なしたスアピが突きつけた槍先をそのまま真っ直ぐに突き出す。
それは正確にオルドの首筋に向かっていて、これだけの至近距離である以上避けられよう筈が無かった。
が、しかし
「……危ない所でした」
「全くですよ~後先考えないんだから!」
殺意の込められた槍の一撃を二人で受け止めている。
二人の顔を見たスアピは特に驚きもせずに『ああやっぱりな』と納得したように頷いていた。
「……お前らがスパイだったのか」
オルドの前に立ってスアピの刃を止めたのは、あの少年兵二人だった。
そのうちの一人はガルム将軍貴下の諜兵だったと後でムランから聞かされていたが、
「なるほど敵だけじゃなく味方にもスパイを送りつけていたのか」
「何か勘違いなさっているようですが、私は最初からオルド様に仕えています。ガルム将軍貴下に入っていたのは任務だからですよ……もっともあの方は感づいていたようですがね」
ギリギリと槍が震えている。
二人がかりで抑えているというのに……。
少年二人が畏怖の色を浮かべて眼前の主の敵を見る。
敵は瞳に感情を浮かばせず。
しかし槍を突き出す力は一片の緩みも無くむしろ増していっている。
「まったくどうして道理がわからないのでしょう……」
失望したように二人の後ろに立つオルドが口を開く。
「ああ?なんのことだ?」
「君も実際に見て、聞いたはずだ!あの貴族達の腐敗振りを!大仰に名誉、誇りを口にするくせにそれを守るために何もしようとしない……犠牲は他人が支払ってくれると信じ、それを恥じようともしない!だからこそ変えなければならない!誰もしないなら私自身が変えて本当の名誉を!誇りを!全てを示さなければならない。そのためには優秀な人間が必要なのだ……身分の高低などは関係ない!本当に優秀な者が立ち上がらなければならない!」
若々しい情熱のこもった演説だった。
オルドの言っていることは確かに今回のことで嫌になるほどわかったことだが、それでもしかし、
「それでうちの大将を誑かして連れていくつもりかよ……大層なことを言っちゃいるが、お前は味方の総司令官を罠にはめて殺したうえに敵まで逃がした大逆者じゃねえか」
「理想の為の犠牲……いやあの腐り切って落ちる寸前の実のような男一人と僅かな兵で国が変わるのなら比べるべくもないでしょう」
「なるほど大した兄ちゃんだ……でもな?手前の理想のために味方を罠にはめて殺すような奴にあいつを仕えさせるわけにはいかねんだよ」
「オルド様!始末の許可を……。少し腕っぷしが強いだけの者に貴方の理想が理解できるはずがありません。ここまで知ってる以上この場で無礼討ちということにして始末しましょう」
グラム将軍の下についていた少年が懐から短剣を取り出して叫ぶ。
もう一人の少年も姿勢を低くし、いつでも飛びかかれる準備をしている。
「おもしれえな……お前ら二人程度でこの俺様が殺せると思ってんのか?両手両足切り飛ばして壁に縫いつけてやるよ」
にやりと笑うスアピからは絶望するような殺気が発せられていた。
少年二人も背中に汗がつたい、わずかに手足が震えていたが、歯を食いしばって主の命令を待っていた。
「わかりました。我々はこの地を去ることにしましょう……それで矛を収めてもらえますね?」
「ああ、今すぐこの街から出て、そして二度と来るな」
「後者はまあ考えておきましょう……君達、帰る準備をするよ」
ユラリとまるで先ほどのほろ酔いが改めてやってきたようにフワフワとした足取りで廊下を歩き出していってしまう。
従者の二人も後に続くが、一度振り返って挑戦的な目をして主の後を追っていった。
その背中にスアピが陽気に声を投げかける。
「今度またその小奇麗な顔を見せたら首切り落として森の木の栄養にしてやるからな~」
「よく覚えておきますよ~」
笑顔で手を振る主を不満げに見つめながら従者達は後をついていく。
「よろしいんですか?あんな無礼を許して」
「無礼ってどんなだい?」
「どんなって……あの槍の男ですよ!どうしてあんな無礼を許すのですか?こんな地方領主の息子のそのまた従者がオルドさまに刃を向けたのですよ!処罰を……」
激昂する少年の従者の言葉に主がため息をついて答える。
「処罰をしてどうする?」
振り向いた主の顔に気圧されて彼が何も言えないでいると、
「処罰をしてどうするの?あの槍の彼は達人だけど君ら二人が束になってかかっても殺せるの?」
「それは……命令とあらばこの命をかけて」
「そうだね、君ら二人が命をかけて戦えばあるいは相打ちで殺せるかもしれないね、その結果どうなると思う?大事な部下が二人死んで、有能な武人が一人死んで、これまた有能な能使を仲間に引き入れることもできなくなる……そんな馬鹿なことをする主にしたいのかい?」
「いえ……そんなことは……」
恐縮する少年の頭に優しく手を乗せて、ニッコリとあの育ちのよさそうな笑みをたたえる。
「君たちの忠誠には心から感謝しているのだよ……だからこそ君たちと彼らを失うわけには行かないんだ……わかるね?」
「…はい、わかりました」
「わかってくれるならそれでいい……しかし」
やや薄暗い廊下を振り返る。
スアピの姿はとうに見えなくなってはいたが、彼の発した獣のような殺気の余韻を感じ取りながら、
「今度ここに来るときはじっくり考えてから来ないと本当に死んでしまうかもね」
苦笑するように笑いながら、背中にじっとりと汗をかいてオルドは呟いた。
宴の広間では領主の次席に座っていたムランが青い顔をして項垂れていた。
出会った当初の身分に合わない人懐こさと気後れするような高貴さ。
これまた当初はわからなかった強引さを見せて自分を王都に連れて行こうとするオルドの誘いをどうやって失礼なく断るかを必死で考えていた。
普通に考えれば上級貴族の貴下に誘われたのなら地方の小領主の息子に過ぎない自分にとっては二度とないであろう出世の好機であるはずなのだが……。
チラリと上座の席に座るトールの方を見る。
まだ五十になったばかりだ。
だが勇士として戦場を縦横無尽に駆け回ったであろう父の顔には深いシワがきざまれ、頭髪はまるで雪が降り注いだような白髪になっている。
領主として政務に励み、毎日起こる様々な問題の解決にまさに粉骨し続けた結果があの姿だ。
名も無き雑兵から成り上がった父は律儀な性格によって時には貧乏くじを引かされることも多々あったが、王から任されたこの地をまさに全てをかけて守り、発展させようと努力し続けている。
そしてそんな父の姿を見て育った自分も同じようにこの地を治めて行きたいと思っていた。
それに国境に近い田舎のこの地方にすら出世争いに関係する妬み嫉みが跋扈しているのだ。
低い身分から成り上がった父の苦労を端から見ていた自分としては上級貴族の子息に引き上げられて中央に赴くなんて地獄に向かうのと同義なのだ。
だからこそ、どうしても、オルドの誘いを是が非でも断りたかった。
しかし国の中でも有数の有力者の一族でもあるオルドの誘いに乗らないということも面子を潰されたオルドやその周辺の方々を考えればそれも地獄に落ちることと変わらなくなる。
つまり彼は現在、すでにその気になっているオルドの誘いを断り、なおかつ何の遺恨も残らないような納得のいく理由を考えなければならないというジレンマに陥っている。
そしてその理由が全く思い浮かばないという状況に頭を抱えている状態だった。
目の前の杯にはうっすらと白くにごった酒が注がれているが、時間がたってしまいすっかりとぬるくなっている。
しかし当の本人は飲みすぎたかのように青い顔をして下を向いている。
「まずい、まずいぞ……どうすれば……」
ぶつぶつと独り言を言うこの次代の領主に遠慮してなのか?
それとも上機嫌で豪快に笑うトールの相手が忙しいのか誰も彼の様子に気づいて話しかけるものはいない。
「よう、どうした?ずいぶんと気分が悪そうだな」
気安そうに声をかけてきた自分の従者に一瞬ホッとしたような顔をしたが、すぐにまた悩み深い顔になる。
そんな主の事情に気づいているスアピは横にどっかと座ってムランの前に置いてあった杯の酒を豪快に飲み干す。
「何だよ、ぬるい上にすっかり酒精が飛んじまってるじゃねえか」
文句を言いながら杯を元の位置に戻す。
その豪快な行動に安心したのか、あきれたのかムランの表情が柔らかいものになる。
そして何も言わずに空になった杯の隣にもう一つ杯を用意し、一緒に酒を入れた。
二人はお互いを一瞬見合って無言のまま一気にそれを身体に流しこむ。
酒を飲んだあと特有の全ての悩みを身体から追い出すように、深く強く息を吐く……そして互いに笑いあう。
「宴会の席で暗い顔をしてるなんて小市民チックなお前らしくないな」
「全く、そんな風にもなるさ……オルド様が一緒に王都へ行こうと誘ってきたんだ」
「ほう、それは良い話じゃねえか……どうするんだ?」
すでにオルドがムランを勧誘していることを知っているが初めて聞いたように振舞って主にたずねる。
結論はすでにわかりきってはいるが……。
「冗談じゃない!ただでさえこの街を治めるだけで精一杯だというのに、中央なんかに行ったらもっと忙しくなるじゃないか……それに気を使わなければいけない機会が増えすぎて俺は死んでしまうよ」
愚痴るように……でもすっきりしたような顔で自分の想いを出す主を、何か弟を見る兄のような目で見ながら、
「そうだな、そんな都会に行ったらイヨンが色々な問題を起こしてお前、憤死しちまうような、ははは!」
豪快に笑いながら杯を持ち上げる。
やや乱暴な手つきなので少しこぼしてしまうがそれもご愛嬌と言わんばかりに笑い飛ばす。
「全くだよ……ってお前も問題起こすだろう?」
「違いねえ違いねえ……うん?ほ~れ、うちのお嬢ちゃんがやってきたぞ?」
そっとスアピが視線を向けた先を見ると広間の扉を少しだけ開けて顔を出してキョロキョロとしているイヨンが居た。
そして二人を見つけると嬉しそうに破顔して駆け寄っていく。
最後の戦いが終わってから帰ってすぐに髪解きをしたのですこぶる機嫌が良いようだ。
甘えるようにムランの背中に引っ付く。
「現金な奴だな」
苦笑するスアピにべーと舌を出して返す。
「これは二人とも、仲良く主人と同席ですか?ムラン殿が羨ましいですね。優秀でこんな可愛らしい従者がいるだなんて」
しっかりとした儀礼の教育を受けたことを想像できる程に、オルドが意義正しく三人のところへやってきた。
「あっ、こ、これは……」
「ああお気をつかわずに、さてと再度飲みなおそうとしますかね……スアピ君?私にも一杯注いでくれませんか?」
屈託も無い顔のオルドの懇願に一瞬スアピが黙るが、すぐに酒を器に注ぐ。
「ありがとう……それでは」
杯のふち一杯まで入れられた酒を一気に流し込み、大きく息を吐いた。
「ぷはー!美味いですね。まさに勝利の美酒だ」
「は、はは……オルド様のおかげで我々はこれを味わうことが出来たのですから感謝の極みですね……それで……その……先ほどのお話なのですが」
酔って機嫌が良くなったと思ったムランが王都随行の話を切り出そうとすると、オルドが急にかしこまってペコリと頭を下げる。
「いやあ申し訳ありません酔っていたとはいえ、あまりにもぶしつけな願いでした。部下にも叱られてしまいまして……というわけで自分から言い出したことではありますがその話は無かったことにしていただけますか?」
部下という言葉に一瞬スアピがなんとも言えない顔を浮かべたが、ムランは気づかずホッとした様子で、
「そうですか……いえいえありがたい話ではありましたが、非才の身では荷が重かったものですから」
誤魔化すように笑い、そっとオルドの杯に酒を流し入れ、自分の杯にも注ぐ。
「それでは忘れるとしましょう。先ほどの話は『一酔の夢』ということで」
ムランの言葉にニコリと笑って杯を軽くぶつけ、チンと音がなったのを合図に一気に二人は杯を開けた。
それ以降は他愛も無い話をして楽しく宴は過ぎていったのだった。
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