幕間 そのころシルヴィア

 朝、眠い間に叩き下ろされて起こされたシルヴィアは眠い目で弟ドラコの帰りを待っていた。

 家に帰ってきたことだし、私特性の真っ赤っかドリンクでも作ろうか、いや、けだるい。空腹ではないしいいやとソファーの上で横になった。

 シルヴィアは銀髪でさえなければ、青白い肌、やけに細く骨ばった腕は語り継がれる吸血鬼そのものだろう。時折赤い唇からとんがった犬歯が見え隠れするし。

 それに対して弟のドラコニズルは、大蝙蝠のようなマントを着ているくせに、それほど吸血鬼ぽくはない。肌の血色はいいし、首からは触手が伸びる。申し訳程度に前髪をM字に切りそろえてはいるが、その髪も金髪であるし、さらに吸血鬼らしくはない。

 二人は、かつて一人だった。シルヴィア・ドラコニズル・シャーン。その人の名。その時はどちらかといえば男よりであったからシルベスターなのかもしれないが、片親であるドゥブラが新しく名前を二人につけることをめんどくさがり、ただ名前を分け与えるだけになった。

 名前の意味は、【森から】のシルヴィア。ドラコニズルのニズルってなんだよ。ニズルはノズル。触手。それでもドラゴンの触手になるので意味があまり通じない。

 ドゥブラはドラコニズルという名前は、自身の弟分であるデモクラ・ココを陥れるための名前だという。だったら、【ドラゴンを殺す触手】という意味になる。ただ、名前を付けたのがドゥブラなので、本当は適当に着けただけなのかもしれない。あの怠惰の化身はそういう人だ。


 頭を背もたれとひじ掛けの重なる角にめり込ませて、シルヴィアは横になっている。なんか分からないが、マモリからすごい勢いでベイズが逃げ出しているなーとぼんやり思いながら。そういえば、あいつ、歯がないのに何故あんなにぺらぺら喋れるのだろう。まあ、いいや。と。


 ガチャリ、ログハウスの取っ手が開く。弟が帰ってきた。何を連れ帰ってきたのだろう。普通の二本足だが。

「ただいま姉さん。朝ドリンク飲んだ?」

「いや、まだだ」

 ゆっくりと、棺桶から足を軸に起き上がる映画の吸血鬼よろしく、起き上がった。

 扉の向こう側の方をドラコはマントで隠す。

「ご紹介願おうか」

 腕を上げて自身の絹髪を後ろにまとめる。姫、であることで持て甘やされるのは好きじゃないので、髪はマルーリと同じようにアップでまとめている。

 結び終わるのを見ると、ドラコがニッと、頬を上げてマントを下げる。

「こちら、海の一族のシスイ・マメイドさん。シスイさん。うちの姉のシルヴィア姫です。」


 なる心臓こそないが、あったら強く脈打ったことだろう。


 左右二つづつ。普通の人型であればそこは腕が伸びているところを、吸盤のついたヌルりとした触手が青く、伸びている。

「あ、あの、十年前の私の誕生会にご出席なられましたか?」

 うわー!!あの姉さんが動揺してる!食以外のことに関しちゃ鉄面皮なシルヴィア姉さんが忙しなく手を、指をいじってる!あ!髪までいじっちゃってかわいい!!

 この場の雰囲気を作り出そうとしている二人より、ドラコの表情はうるさかった。

「いいえ、あの時私は、留守番だったもので、姉や兄しかいっていません」

「まあ、ということはあのご兄弟の末弟というのは貴方なんですね。お会いできて光栄ですわ」

「め、滅相もない!私こそ、貴方の弟さんに出会わなければこうしてお目にかけることもなく、ご紹介いただけたのは全く幸運で…。ああ、何が言いたかったんだっけ」

 シスイが頬を青くすると、シルヴィアも頬を赤くした。




 ところが、この場の雰囲気に一番で耐えきれなくなったのは作者である。終わり!!

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