戦い
「あのすかした靴はいてた女の恋人かあ」
女は連れを先に帰らせると公園のベンチに座り、タバコに火をつけた。整形外科の看護師、カワカミと名乗った。
カサイ達は冷静を装い彼女らに話し掛け、公園まで連れ出した。 ヒロキはヒロキでうまくやっていることを祈るしかない。
カワカミは素直に自分の身の上を話した。
「力がある人間がその力で気に入らない人間を裁いて何が悪いの」
カワカミは笑う。何様だ。カサイが怒鳴り掛けたところでカワカミのスマホが鳴る。彼女はそれをチラリと見て、タバコを消す。
「でも私はそう長くは無い。私の仲間が呪い返しで酷い目にあったみたい」
諦めの笑顔。
カサイはこの女を殴りたかったがそれを見て止めた。
「わかりました」
カサイは目を合わせずに踵を返した。ヒロキの先輩であり自分の後輩である大学生…コウダは不思議そうな顔でカサイについてきた。
「いいんですか」
「ああ」
振り返って彼女の姿をもう1度見る。
空を見上げて2本目のタバコを吸う彼女の顔は煤けたように真っ黒で、もう見えなくなっていた。
多分今、全ての呪いが彼女に返ってきている。
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