スレバの町物語【ある転生者のささやかな日常】

宮川 千

第1話 プロローグ

「採取会参加者は、こちらに集まり下さい」


大声を出しているのは、商業ギルドの担当者だ。

雲の森の中域にダンジョンが発生し、そちらに向かう冒険者が増えてしまい、雲の森での採取する者が激減してしまった為、冒険者見習い、薬師見習い、職人見習いから希望者又は選出した者で何組かのグループを作り、集団で採取する為商業ギルド、冒険者ギルド、薬師ギルドが定期的に開催するようにしたものだった。


今回の待ち合わせ場所は、商業ギルドで見習い参加者は計18名3グループの集まりで、引率する者や護衛の冒険者が15名とそこそこ大きな集団の集まりとなっていた。


「準備OK、忘れ物はなしっと」


肩に乗る糸蜘蛛も同意するかのように、前足を上げている。


「そだ担当者に見せないとね」


アイテムポーチから、冒険者カードを取り出す。

採取会に参加する者は、職人見習いであれ雲の森に入るなら、冒険者登録をしなければならないと決まっていた。


レアは、服飾職人見習いだが糸蜘蛛をテイムしているので、テイマーで登録をしていた。

糸蜘蛛とは、手の平くらいの大きさで服飾職人であれば必ずテイムしている魔物だ。


何故って、縫うに必要な糸を制限なく使えるからだが、テイムしてまだそんなに経っていないのと、糸蜘蛛から出してもらう糸の太さがまだ不安定なので、縫い糸として使える糸の長さは短い。


「おはようレア。今日もいい天気だね」


同僚のエミリーと、今日は一緒のグループだった。同じ工房の見習いで、仲は良かった。


「はよ〜。エミリーの子グモも元気そうで何よりだね」


蜘蛛同士で前足上げて、挨拶している姿は可愛いと思う。


「受付先にしとこうか?今日のノルマは何だっけ?」


「染色露草だよ。今の時期から群生地あるかも。それ規定量の採取すれば、後は自由だから自分用の採取できるし、子グモの餌の採取とやることいっぱいあるね」


採取会の受付担当者に冒険者カードを見せると、出発までエミリーと時間をつぶすことにする。


「確認した今日の臨時のパーティメンバーは、見習い冒険者のラルフとエイルに、見習い薬師のメイとカイ、職人見習いのエミリーと私(レア)みたいだね。またラルフと一緒だよ」


仲は悪くはないが、口が悪いせいか、言い合いになることが多いのだ。

冒険者に憧れが強い者にありがちな、考えなしなところがレアからすれば気になってしまうのだ。


「まぁいつもの事だよね。とりあえずメンバー集まるみたいだから挨拶しておこうよ」


エミリーが薬師見習いのメイとカイを見つけたようで、後をついて行く。

レアとは初見だったが、エミリーの知り合いだったようだ。


全員が揃ったのか、用意された馬車に乗り込み雲の森へと向かった。


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