絶対非を認めないマン

雪解 水

第1話 起床


まもる!いつまで寝てんの!目覚まし何度も鳴ってるわよ!早く起きなさい!」


 母の声が下の方で聞こえてきた。


 だけど、俺は起きない。理由は単純、起きる気力がないからだ。


 俺はそのまま目を閉じて朝のこの至福の時間を楽しむ。


 俺はこの時間が好きだ、理由は無い。どれぐらい好きかと言われると腹が満たされた時の幸福感より好き。


 ——バン!


 突如、鼓膜を打ち付けるその音が鳴り響いた。原因は当然のように母だった。



「起きろっていってるんだからさっさと起きなさい!学校遅れるでしょ!」


 壁の一部が凹むほどの威力でドアを開けて俺を起こしにきた母は、対話なんてものは必要ないと布団を掴んで引っ張ってきた。



「わかったわかった。朝からテンション高いんだよ。今から起きるから早く部屋から出てけ」


 ブツブツとまだ小言がうるさい母をあしらい、守はさっきまでの時間に別れを告げた。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 斜構しゃがまえまもるは一般の高校生である。少しばかり並外れた捻くれさがあるがそれは多様性であり素晴らしい事だと本人は自負している。


 どれほどのものかと言われると、絶対に非を認めないことを自身の信条としているくらいの捻くれさである。


 いいや、それほど重症じゃないと本人はそういうがその時点で否定的なところから入っているので重症だ。


 それを示すようにこうやって寝過ごして母に怒られてまでいるが守は反省するつもりもさらさらない。


 だって鳴らなかった目覚ましが悪いし起きれないほどの疲れさせた原因が悪いんだから。



「守!お母さんもう仕事行くから!ちゃんとご飯食べて学校遅れないように行くのよ!」


 母は叫んだ後家を出ていった。

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