お茶の話5 ~煎茶道から遠く離れて~

では今回は用語をちょろちょろ。


私のお茶体験は、実家の食卓です。食後、休憩、コーヒーも紅茶もあったけれど、緑茶は当然の顔で食卓に茶筒がありました。

急須は家族4人分が一度に入る大きめの、湯呑みはマイ湯呑み。

でも、意識していなかったけれど、急須の形状に不満がありました。

すぐ葉が詰まる注ぎ口。湯呑みの底に溜まる細かい葉の数々。


何度か書きましたが、今のメイン緑茶は『深蒸し煎茶』です。

お茶を淹れる側の知識が足りなかったので、不満の解消にいたらなかったのでした。


そもそもお茶は、文化的な流れではいわゆる『茶道』が先です。

中国(唐)から伝わったのが奈良時代、お寺関係者と武士に広まって、茶室や器やしつらいに決まり事が現れます。茶の湯ですね。侘茶が完成したのが千利休あたり。『茶道』です。


お茶の作り方をざっくりいうと、

摘んだ葉を軽く蒸し(加熱し)て発酵を止めます(植物はなまものですからね、呼吸で水分は減るし乾いて固くなり酸化も進む、鮮度を保障しなければゆくゆくは腐敗。それを止めます)。

これを『殺青(さっせい)』といいます。かっこいい。(厨二感想)

それから表面の水分を落とし、揉んで中の水分を減らし、乾燥させて第一段階完成です。

(『荒茶』と呼ばれます。ちなみにほんの一時期流通する『生茶』はここのこと)


ここから分岐。以前の製法がこちら。

揉まずにどんどん乾かしてカラカラにしたもの(を葉部分だけ丁寧により分けて)を臼で挽いて粉末にしたものが『抹茶』です。抹茶は『碾茶(てんちゃ)』とも書きます。これは鎌倉時代頃に製法が広められたようです。


揉みが開発された『煎茶』は江戸時代。だいぶ後ですね。

摘んだ葉を即蒸すところまでは一緒で、そのあとに『揉む』工程が入ります。

(一応、間に中国から「釜炒り煎茶」が伝わるのが入ってますねー。煎茶の飲み方がやってきてから、煎茶を飲む方法として揉みが開発されたんでしょーか。付け焼き刃なのでまた調べるわ)


このあたりから、やっとお茶は庶民の文化まで降りてきます。


で、この頃からの研究で、ちょっと前まで、蒸す時間は基本20秒くらいだったと思ってください。

けっこう短いよね、20秒。

摘んだ葉の酸化を止めて、生青草さをなくして繊維を柔らかくして…

そうして揉まれていった茶は、葉の形を残したまま針のように尖ってぴいんと青く光ります。つやっとしてます。


実はこれが『浅蒸し煎茶』。

つまり、ちょっと前(昭和…!?)まではこれがスタンダード!

「浅蒸し煎茶」なんて名前はなかったんです。

だから流通する急須も、注ぎ口のなかに陶器の穴あきがある程度でも葉は詰まらなかったんですね。


ところが、工業技術的な要素と健康志向から、よりお茶の成分をしっかり抽出できるお茶として、『深蒸し』製法が開発されました。蒸し時間は60~120秒。長くて2分って、時間としては充分短い気がするけども、それまでの浅蒸しに比べたら3~6倍の長さ。


蒸しが長い分、揉みの工程で葉は崩れやすく、ポロポロになりましたが、その分急須で淹れる時により高い温度でも(比較的ね)出せて、抽出時間(=待ち時間)は短く、水色(すいしょく)は深い緑になりました。


浅蒸しは透明度が高く色も黄色が強いです。


茶葉の新鮮なイメージ、味の濃さ、手軽さが受けて瞬く間に深蒸し製法が広まって『煎茶といえば深蒸し茶』になりました。


で。


土物業界もわかってたと思うんです。

でも庶民は知らなかった。

なんで急須が目詰まりを起こすのか。細かい葉がお茶に混ざってしまうのか。


深蒸しのお茶は、飲料部分にすべての旨味を明け渡すため、残った茶葉は不味いです。湯呑みに入り込んだ葉っぱも不味いです。


あとね、バブルとか不況とか関係あるのかな、クズ葉を300g500円くらいで流通に乗せてる時期があったの。

これは業界が悪かった。

安かろう悪かろうは、結局『嗜好品』にはとどまれなかった。


だって、いくらお茶が「日常の風景」でも、おいしくなかったら消えていくんだよ。


あ、ごめん、これ愚痴だ。12年前くらいに会社の庶務担当さんが来客用に買ってきたお茶がめっぽう不味くてな、なんじゃこりゃー!となって値段訊いて納得してな、せめて100g1000円出してくださいって言ったら「コーヒーしか飲まないから相場わかんなくてテキトーに買った」ってね……ぶっちゃけそんなモン流通させてるほうが悪いだろ……(コーヒー豆だったら300g500円なんて買わないであろう事実に悲しくなったとも)


ええと、話それた。


とにかくだ、道具が噛み合ってないこと、やたら安い物が市場に出回ったこと、あとね、急須(道具)のデザインが若者に訴求しないこと、が、衰退した原因かなって思ってる。

お茶業界的にはどういう反省点を挙げてるのかは知らない。


用語の話が、歴史の話にスライドした感があるけど、

とりあえず今回はこんなもんで。


次は急須の話にいっちゃおうかな~(遂に!?)


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