第376話 教会の住民達
修道士のエドモンドと一緒にイングマルの馬車に乗り教会に向かった。
エドモンドは「そなた以外と早かったな、もっと先と思っていたが。」と言った。
イングマルは「ええ、航海自体は順調で問題はありませんでした。
石灰もイングランドのドーバーの街で安く仕入れることができました。
後で持っていきますね。」と言った。
エドモンドは「そうか。すまない。しかし屋敷ではさんざんだったな。
今回の事でそなたらの風当たりがますます強くなるかも知れないな。」と言った。
イングマルは「まあ、初めだけですよ。こんなことではまったくひるみませんよ。
問題の内にも入りません。」と負け惜しみを言った。
エドモンドは「ははは。そなたはへこたれんな。」と言った。
程なく教会に到着した。
教会の中では礼拝の時の椅子が片づけられて地面にゴザを敷いて20人程の人がいた。
住民達は皆お互いに不安で憔悴していたが修道士のエドモンドを見ると集まってきて口々に「修道士殿、これからわしらはどうしたらいいんじゃ?家も道具も何もかも失ってしまった!?」と言ってきた。
エドモンドは「落ち着いてください、これから言うことをよく聞いてください!」と言った。
エドモンドはイングマルを呼び寄せ「そなたから伝えたほうが良いか?」と言ってイングマルを前に出した。
イングマルは緊張しながら「ギ、ギルドシーワゴンのアウグストと申します。
この度はみなさまお見舞い申し上げます。
ギルドでも何か出来ないかと検討致しましてご希望の方がいらっしゃいましたら、世帯分仮設住宅を提供したいと思っています。」と言うと皆驚いて口々に
「家を作ってくれるのか?!」
「ただでか?!」と言った。
イングマルは「もちろん無料です。期限もありません。
当然仮設なので皆同じ仕様で粗末な建物になりますけど、雨風はしのげるかと思います。」と言った。
「そりゃありがたい!」と皆喜んだ。
イングマルは「ただ、皆さんの元いた場所と言うわけにはいかず、桟橋周辺にまとまってもらうことになります。」と言った。
住民達は「そうなのか?」と言って残念そうにしていた。
イングマルは「建築材料の搬入運搬の事を考えるとどうしても桟橋の近くになってしまいます。」と言った。
住民達はは「まあ仕方無い。住む所があるならその方がいい。」と言って納得し、教会にいた住民全員が仮設住宅を希望した。
世帯数は10軒25人である。
イングマルはさらに「ついでに桟橋と倉庫の管理人を募集しています。
希望する方はどうぞ申し出てください。」と言った。
住民達はそれを聞いて互いに顔を見合わせて「管理人?・・・・いったい何をするんだ?」と言った。
イングマルは「桟橋と倉庫の番人ですね。
見回りや掃除、荷物の積み降ろし。あとはお客さんとのやり取りですね。」と言った。
住民達は「お客さんとのやり取りとは?」と聞いた。
イングマルは「お客さんが欲しい商品や希望する物を聞いておいたり、倉庫にある荷を売ったりです。なので読み書き算数が出来る人がいいです。」と言った。
住民達はほとんど読み書き出来る人がいなかったので初めから無理だなと思っていた。
イングマルが「手当てはうちの船員と同じで年俸制、半年ごとに金貨6枚と銀貨6枚を渡します。」と言うと住民達の顔色がみるみる変わり「詳しく聞かせろ!」とつめよってきた。
貧しいこの辺りの住民達にとっては破格の給料だった。
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