第365話  新船




イングマルは「そういえば手にいれた新しい中型船と乗組員はどうなったかな。」と聞いた。




ジョンは「おお、まだ見てなかったのか?もう準備出来てるみたいだぜ。」と言った。




イングマルは「そうか、じゃあ早速見に行ってこよう。」と言って病院を後にした。







前回海賊退治をして手に入れた中型船。


ギルド内では一番大きく積載量はグレート・パッション号の2倍近くある。





船の整備と新しい船員募集をロイドとウイリアムに任せていた。





桟橋に向かうと一際大きく美しい船が見えてきた。




海賊船のときの真っ黒とは違い船体はカーキ色に塗装されギルドの他の船とおなじになっていた。



喫水線付近は白と黒のストライプ線が入り3本マストに三角の帆である。




多くの船員が忙しく船の整備をしていた。






イングマルはそれらを眺めながら美しい船に見とれていた。




船に上がりそこらじゅうの艤装をペタペタなでさすっていた。







甲板にタールを塗っていた船員が勝手に入ってきたイングマルを見つけて「おい!こら!なんだこのガキッ!勝手に入ってきて?汚い手でそこらを触るな!」と怒鳴った。





イングマルは笑顔のまま「やあ、御苦労様です。いい船になりましたねー。」と言った。





船員は頭のおかしなガキと思ったようで「何を言っとるんだ?あったりめーだろうが!今じゃこの町一有名なギルド、シーワゴンの船だぜ!特別選ばれたもんしか乗れない船だ!お前みたいな奴が勝手に乗れる船じゃないんだ!さっさと降りろ!」と怒鳴った。





騒ぎを聞き付けて他の船員たちも「なんだなんだ?」と集まってきた。






イングマルは笑顔のまま「やあやあ、まあまあ、押さえて押さえて。」と偉そうに振る舞っていたがそんな態度がますます船員たちをイラつかせた。



「なんじゃ?!このガキは?!さっさと出ていかんかッ?!」とみんな怒鳴り出したが騒ぎを聞き付けたロイドがやって来て「何を騒いでるんだ?・・・おお!アウグストじゃねーかッ?!戻ったのかッ?!」と言った。





船員たちに捕まれ揉みくちゃになっていたイングマルは「や、やあ、無事戻ったよ。」と言って手を挙げた。





ロイドはイングマルの姿を見て少しあきれ「何やってんだ?・・・・おい、お前たち放してやれ。そいつはこの船のオーナーだぞ!」と船員たちに言った。





船員たちはお互い顔を見合わせ「こいつが・・・?まさか・・・・?」とつぶやいた。





ウイリアムもやって来て首を振りながら「本当だ。」と言った。




イングマルは「ど、どうも、ア、アウグストと申します。よろしくお願いいたします。」と言った。




船員たちは慌ててイングマルを放して「し、失礼いたしやしたーッ!」と叫んで平伏した。




イングマルは乱れた服を整えながら「いやいや、僕の方こそ邪魔してすんませんでした。」と言った。



「しかしいい船に仕上がりましたねー。まるで見違えたよ。」と言った。







ウイリアムは「ああ、そうだろ?前のやたら大きい横帆は無くして他の船とおなじ三角帆にした、これで大分手が掛からなくなったぞ。」と言った。





イングマルは「乗り手は何人雇ったの?」と聞いた。





ウイリアムは「とりあえず30人だ。希望者が殺到してな、100人以上いたが何とか30人に絞った。


余裕が出てくれば追加で雇えばいいだろう。」と言った。






イングマルは「うん、いいんじゃないかな?船の状態はどう?出港はいつ頃出来そう?」と聞いた。






ウイリアムは「船自体はもういつでも出港出来るぞ、後はエーギルじいさんとお前の都合とマストの射撃台がまだだな。」と言った。





イングマルは「そうか、それじゃすぐ取り付けよう。」と言って桟橋にある廃材の中から板を何枚か集めてきて抱えると釘とハンマーを持ってスルスルとマストのてっぺんに登って行った。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る