第357話  メンツ



エミリア夫人は使用人たちに命じて荷馬車に穀物の入った麻袋を積み込ませイングマルの荷馬車と2台で桟橋に向かった。




しばらく行くと来る時出会った酒飲んで博打打っていた男たちと再び出会った。




男たちは荷馬車を見ると近づいて来てエミリア夫人に「ちょっと待て!奥さん?こりゃなんだ?その荷は?




出荷はいつもまとめて俺たちが運んでいるだろう?」と言って馬車の前に立ち塞がった。





エミリア夫人は「近くに桟橋が出来たそうなの、これから見に行くのよ。


使えそうならもうエストブルグに行く必要は無いわね。」と言った。






男たちはそれを聞いて「何だって?!」と驚いていた。





イングマルは「そうなんですよ。今度ライオネル卿のお屋敷の近くのスベン川に桟橋が出来まして、うちのギルドが請け負う事になりました。




皆さまもどうぞご利用ください。」と言った。






男たちは「何だ?!ガキに聞いてねーぞ!ガキはすッ込んでろ!」と怒鳴った。





エミリア夫人は「ちょっと?!何も怒鳴ることないでしょう?」と言った。






男たちは「いいか奥さん?俺たちゃガキの使いじゃねーんだぜ?!今まで利用しておいて用が無くなったら後は知らんはねーだろ?」と言ってすごんだ。




エミリア夫人は「なに?じゃどうすればいいの?」と言った。





男たちは「あのな?誠意を見せろちゅうとるんじゃ、誠意を!」と言った。





エドモンドは「おぬしら!いい加減にしろ!大体誰も頼んでないのに出荷をいつもいつも強引にやって来て高い手数料を取っているのはおぬしらだろう?!」と怒鳴った。




男たちは「何だと?!いい加減なこと言うんじゃねー!」と叫んだ。





エドモンドは「そうじゃないか?!皆迷惑してるんだぞ!いつもいつも何だかんだと言って高い手数料を踏んだくりおって!



自分達でやればそんなにかからないのに!皆我慢しているのだ!」と言った。






男たちは「このやろう~!女の前だからといって言いたいこと言いやがって?!


覚悟は出来てるんだろな?!」と言ってエドモンドを睨み付けた。




エドモンドはそれを聞いて怖くなってひるんだ。





イングマルはそれを見て「まま、まーまーまー。皆さんの出荷の用はもう無くなりますが桟橋が出来たことで皆さんにも利益になると思いますよ。」というと男たちは「何だと?!どういう事だ?!」と聞いた。





イングマルは「なに簡単なことですよ。自分達で作った物を持ってくればいいんですよ。


うちのギルドが何でもどこにでも運びますよ。





エストブルグへ行く必要もないしうちのギルドは小さいですけどその分小回りが効くのでどこにでも行けますからね。」と言った。





男たちは「今はそんな事聞いてるんじゃねー!俺たちを無視して勝手な事をした落とし前を着けろと言うとるんじゃー!?」とチンピラ同然に怒鳴った。







イングマルは「皆さんは農家さんですよね?農家の仕事は農産物を作ることですよね?これからは農作業に専念できるんですからむしろ喜ぶべきかと思うんですけど?



それにそもそも勝手な事と言いますけど約束や契約を交わした訳ではないんだし自分の事は自分でやるのは当たり前の事で別に問題は無いと思うのですけど?」と言った。











イングマルはどんなに正当性を主張してもチンピラ相手、もはや説得や納得を相手に期待していない。



そんなものは無駄なこととはっきり分かっている。




なにを言おうが相手は反対し反抗し、いずれ争いになるのは目に見えている。



桟橋を作った時点で何らかの反応があるのは覚悟はしていたが早くも現れた事で公明正大に理屈を主張することで自分自身を鼓舞するつもりでいるのであった。




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