第356話  堕落の誘い 





イングマルはエミリア夫人の話を聞いて「でもマダム?マダムも水害にあっているのに頑張っているじゃない?


マダムにできて何で他のもんは出来ないのかなあ?」と聞いた。






エミリア夫人はマダムと言われてこそば痒くて「マダムって・・・エミリアでいいわよ。





まあ後は人生経験と性格的なものかしらね?私は大体楽天的な性格なのよ。


あんまりむずかしい事は分からないし、農家以外他には何も出来ないし。」





特に意識して頑張ろうとかっていうのは私には無かったわね。



無理はしないし、疲れたら休むし。





無理して体を壊したら元もこもないから。」と言った。








イングマルは「う~む」とうなりながら考えていた。







エドモンドは二人のやり取りを見ていたがやがて「もう1つやっかいな事が最近流行っていてな。



そなたもさっき見ただろ?博打を。」と言った。






イングマルは「ええ。でも博打なんて昔からあるんじゃない?」と言った。






エドモンドは「ウム、昔からある小博打なら大して問題は無かったがこの頃はは掛け金が大きくてな。


皆夢中になって何もかも失なう者が次々と出ている。」と言った。





イングマルは首を傾げて「おかしいな?元々貧しいこの辺りのお百姓さんに元手になる金があるはずがないのに?」と言った。





エドモンドは「そうなのだ。胴元はどうやらよそからきた流れ者のようでな。



大金を見せびらかして皆をそそのかしている。」と言った。






エミリア夫人も「ええ、私も聞いてるわ。


農民たちは家も農地も何もかも失なって借金のカタにエストブルグに連れ去られるって。」と言った。






イングマルは少し考えて「妙ですね?金を巻き上げるにしてもだんな衆を狙えばいいのに?


金の無い農民を狙ってもしかたないのに?」と言い「ということは金が狙いでは無いということか?」とひとりごとのようにつぶやいた。






さらに宙を見ながらしばらく考えて「ジム卿なら農民たちを堕落させ追い出して自分の手駒になる兵隊を農奴として送り込み、真面目な農民たちに嫌がらせをして破壊活動をして国力を奪う。




う~ん?なかなかしたたかで効果的、というか嫌な手だな。


関係ない人を大勢巻き込んで・・・回りくどいしめんどくさい。



そんなのは僕は嫌いだな。





殺りたきゃ直接ライオネル卿と勝負すればいいのに。



でもジム卿の考えが分かってしまうのはなんでか・・・・?」とひとりでつぶやいて納得していた。







エドモンドもエミリア夫人もイングマルの言を聞いて何のことか分からず「そなた?いったい何の話をしてるんだ?」と聞いた。





イングマルは「いや、何でもないです。


博打とよそ者の胴元の事は執事殿の耳に入れておいたほうがいいだろうな。」と言った。



さらに「いやーお忙しいところを色々教えていただきありがとうございました。


大変参考になりました。




今日はこれで引き上げます。



エミリア夫人の積みきれない荷は後でもう一度取りにきます。」と言った。






エミリア夫人は「あら、もういくの?なにも出さずに申し訳無いわね。


そうだわ、ちょうどいいから桟橋を私も見ておきたいわ、連れて行ってくれるかしら?」と聞いた。





エドモンドは「え?エミリア夫人?お忙しいのでは?」と聞いた。




エミリア夫人は「大丈夫よ、ちょうど一段落したところだし。




ついでにうちの荷馬車でも荷を運べばまたあなたに荷を取りに来てもらわなくてもいいでしょう?」と言った。








イングマルは「もちろんいいですよ。一緒に参りましょう。



途中エドモンド殿を教会に送り届けてから・・・・」と言ったところでエドモンドは「私も行く。桟橋を見ておきたい。」と言った。




イングマルはにっこり微笑んで「では皆で参りましょう。」と言った。






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