第337話 反省する山猫
ジョンの忠告を聞いてイングマルは内心「敵を作るなと言ったってもうとっくに遅い」と思っていたがジョンの言う事も一理あるとも思っている。
今度の襲撃では不覚にも初めの一撃を避けれなかった。
以前には無かった失態である。
金貨が物理的な意味で救いになったがもし無かったら無事ではすまなかった。
クロードがあれほどの殺意を放っていながら初め感じとることができなかった。
かつての逃げ回っていた頃の自分なら常に緊張して遠くにある殺気でも感じとることができて回避できた。
特に意識しなくても自然にできていたことなのに今回は奇襲を許してしまった。
かつて薬を飲まされ眠らされてしまったことがあったがこのときは敗北した気分で何日も気落ちして反省し対処方法を考えた。
今回も敗北者として猛省しなければならないのに何故かそんな気になっていない。
それこそが傲慢、思い上がりというものなのだろう。
皆を「お粗末な船員だ」と決めつけ見下しおちょくった。
いつの間にか慎重さ謙虚さを失い、反省しなければならないことにも気がつかない。
自分の状況を客観的に理解出来ていないことは、おのれを知ることが出来ていない証拠である。
おのれを知ることが出来ないという事は相手の事など知るよしもない。
「敵を知らずおのれを知らず」ではどんな戦いにも打ち勝つことなど絶対できない。
口で言うのは簡単だが自分を知ること程難しいものはない。
世にパワハラ、セクハラ、いじめ、DV、虐待という言葉が氾濫しているがほとんどの場合それを自覚しているものはわずかである。
だからいつまでも無くなることがない。
おのれの言動が客観的に見てどうなのか?
人の世を生きるための基準となる正しい物指しをいつでも用意しておかなければならないが今のイングマルにはまだ未熟な物指ししかないようである。
イングマルは今一度自分を見つめ直すことにした。
そう言えば素振りの稽古も最近は手を抜くようになっていてたまにやらない時もある。
忙しいと言うのは単なる言い訳にすぎない。
イングマルはジョンに「とりあえず騎士さんたちを送り届けるのと荷をさばくのにエストブルグへ行ってくる。
ロイドとウイリアム二人はここに残って新しい中型船の船員を雇ってもらうので留守中よろしく。」と言った。
ジョンは「ああ。わかった。気をつけろよ。」といって二人は別れた。
買い物を済ませ船に戻ると明日の出港準備を行った。
翌朝騎士5人がやって来た。
イングマルは「今回は船団の護衛もしますので他の2隻と一緒に行きます。
もし良ければどの船に乗っても良いですよ。
グレートパッション号はちゃんと広いキャビンがあるので快適かと思いますが?」と聞いた。
騎士たちは互いに顔を見合せていたが「いや、おぬしの船でいい、矢の訓練もあるしな。」と言ってたくさんの矢の束を見せた。
イングマルは「他に船がいるので今回はより実戦的な射的をやりますか?」と言ってリバティコンティネント号の船長のオットーに船から矢の射撃訓練を行う事を伝えた。
馬屋の寝ワラを束ねて服を着せて何体かのかかしを作りリバティコンティネント号の船首の舷側に並べてロープで固定した。
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