第336話 船乗りという世界
イングマルは自分の馬車に乗っていて騎士たちと別れてジョンのいる病院に向かうことにした。
夕方になっていたがもう少しで病院に着くというところで男に呼び止められた。
「なんだろう?」と思って男と向かい合ったら反対側からもう一人頭巾を被った男が飛び出してきてイングマルに飛び掛かった。
腰に衝撃があったがイングマルは素早く飛び退いて馬車の座席の背もたれに取り付けてあった棒を取り出して男たちに対峙した。
男のものすごい殺意と手には短刀を持っていて、イングマルに再び飛びかかってきた。
今度はひょいひょいとかわし男の手足とアゴの先を棒で打ち付け、股の急所を打ち付けた。
さらに巴投げのようにして男を蹴り飛ばした。
男は急所を打たれた時にすでに気を失っていたようで地面に落ちて白目をむいて伸びてしまった。
もう一人の男は走って逃げていった。
男の頭巾を剥がすとクロードだった。
イングマルの革のベストの腰の部分が切り裂けていたが幸いにもジョンたちの治療費に使う金貨が入れてあった所で金貨が刃物を防いでくれた。
イングマルは「ヤレヤレ、まったくバカなことを。」と呟きクロードを縛り上げて馬車に乗せると衞舎に行って衛兵に引き渡した。
その後病院にいってジョンを見舞った。
ジョンはイングマルの姿を見て「どうしたんだ?泥まみれだぞ。」と聞いた。
イングマルは「ああ。いや実はここに来る途中クロードに待ち伏せされて。
」と何事もなかったように言った。
ジョンは驚いて「な、なんやて?!大丈夫なんか?ほんで奴はどうした?!」と聞いた。
イングマルは「取り押さえて衛兵に引き渡したよ。」と言いながら服の汚れを払った。
ジョンは「バカなやつだ・・・。お前に挑むなんて・・・。」とつぶやいた。
イングマルは「これのお陰で助かったよ。」そういって懸賞金の残りの金貨15枚を取り出してジョンに渡した。
イングマルは「これで皆の治療費にあてて、余ったら皆で分けたらいいよ。」と言った。
ジョンは「いいのか?こんなに?」と言った。
イングマルは「うん。海賊退治の懸賞金だよ。エーギルじいさんと騎士さんらで分けた残りだからね。」と言うとジョンは「お前の取り分はどうしたんだ?」と聞いた。
イングマルは「僕は鹵獲した中型船をもらうよ。あれはなかなかのもんだよ。
速度も小回りも大きさのわりにいいんだ。
積載量はグレートパッション号の2隻分はあるよ。
まあ運用というか、船長はエーギルじいさんに任せるけど。」と言った。
ジョンは「お前は乗らんのか?」と聞いた。
イングマルは「いくら小回りが利いてもあんなんに乗ってたらいい的だよ。船団の護衛なんて出来やしない。」と平然と答えた。
ジョンは「なるほどな・・・それとクロードの事だがな?」といい出した。
「奴だけに限ったことじゃない、お前?あんまり敵を作るなよ。」と言った。
イングマルは「どういう意味?」と聞くとジョンは「このギルドは何もかも常識はずれだから分からないかもしれんが普通船乗りになるのはお前位の歳から見習いで始まるんだ。
それから早い者で30代で三役、40代から50代でやっと船長になれるんだ。
頑張ってもなれない奴もいる。
エーギルじいさんとワシらは言ってるけど普通はあれぐらいで船長なんだ。
俺の歳では本来、三役にもなれないぺーぺーなんだ。
どこのギルドでもそうなんだ。
それがだ!このギルドはほとんど20代、そもそも船主がお前って?あり得ん話なんだ。」
「つまりだ!俺やお前が船長や船主という事だけで他のもんからやっかみというか?ひがみというか?とにかく良いように言う奴はいないんだ。
俺たちがコケるのをテグスネ引いて待ってる奴ばかりだ。
そんなのが俺たちの状況なんだ。
それなのに身内の中にも敵を作っていたらどうなると思う?
いくらお前が強いと言っても人間である以上必ず隙ができる。
破滅する日が来るんだ。」と言った。
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