第326話  エストブルグの海狩り





中型船の海賊たちは以前イングマルに直接火樽の攻撃をうけた者たちなので、また同じ目に遭うと思って完全に戦意を失い、恐怖で逃げまどい隠れるばかりとなって船は操作出来なくなり漂うだけとなってしまった。



海賊「シーウルフ」の船長キャプテンクラークは海賊たちを怒鳴り付けて何とか鼓舞しようとしたが恐怖に打ち勝つことは出来なかった。





イングマルはエーギルに合図して船を横付けさせて乗り込もうとしていた。






その時キャプテンクラークは縛られたジョンを引っ張り出して剣をジョンの首に当てながら「おいッ!これが見えるかーッ!仲間の命が惜しかったら武器を捨てろッ!」とさけんだ。





ジョンは後ろ手に縛られてキャプテンクラークはジョンの背後にいてジョンを盾にしていた。





イングマルは構えていたクロスボウを一旦下ろし、言う通りするのかと思ったらもうひとつ別のもっと強力で大きなクロスボウを取り出して構えた。





キャプテンクラークもジョンもそれを見て「アッ!?」と叫んだが抗議する間もなく矢が放たれ、ジョンの左肩を貫通し後ろにいたキャプテンクラークの鎖骨付近に突き刺さった。




二人は「うぎゃーッ!」と叫んで豪快にひっくり返りのたうち回って悶え苦しんだ。





それを見ていた海賊も人質に捕られていた船員も驚いて我先に逃げ出した。








船は横付けされ完全武装のイングマルが乗り込んできた。




船は半数近くがすでにクロスボウで射倒されており、残りの15人が剣を構えて集まってきた。






恐怖の存在だった相手が間近でみると小さな少年だったのでみんな驚いたが同時に怒りが込み上げてきた。



「俺らはこんなガキにやられていたのか?!」


「クソクソクソーッ!このガキーッ!もうカンベンならねーッ!」


「ちょっとクロスボウが得意だからっていい気になりやがって!乗り込んで来たのが運の尽きだ!剣で囲めばこっちのもんだ!八つ裂きにしてやる!覚悟しろーッ!」と口々にさけんだ。




イングマルはニヤッと笑うと海賊たちは「クソがーッ!」と叫んで一斉に斬りかかってきたが海賊たちの輪を飛び越えざまに二人を斬り倒した。




海賊たちがひるむと考える隙を与えず縦横無尽に走り回り次々と海賊たちを斬り倒した。




逃げ場のない狭い船内での戦闘はイングマルの最も得意とする戦いであった。





騎士たちもロングボウでイングマルを援護して矢を放った。




数分で10人以上が手足を斬られ戦闘不能になってしまった。




残りは戦意を失い降参した。











イングマルは海賊全員を縛り上げ、ジョンたち5人の捕らえられていた船員のロープを解いた。





皆には「すぐにアントウェルペンに向かって!」と指示した。



「すまんがこの人数ではこの船は動かせんぞ。」とオットーがいった。






イングマルは「とりあえず出来る限りのことしていて、すぐに応援呼んでくるから。」といった。



イングマルはジョンのそばに駆け寄るとジョンは青い顔して「ま、まったくむちゃくちゃしやがる・・・」と言って脂汗を流しながら肩を押さえて苦しんでいた。




イングマルは「ちゃんと急所は外したでしょ。」と言ってジョンに包帯を巻いた。






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