第327話  エストブルグの海狩り2







イングマルはジョンのことを他の者にまかせ、自分の船に戻ってすぐに別の船を追った。





中型船での戦闘はあっけなく終了したので他の船はまだ視界内にいた。




次に狙いをつけたのは「リバティコンティネント号」で海賊たちだけしか乗っていない。




ジョンが船長をしていたこの元海賊船はジーベックという高速の船だったが今は積み荷を満載して速度は出なかったのですぐに追い付いた。





海賊たちは12人しか乗っておらず、油断からか武器は剣しか持ってきて無かった。



イングマルは海賊たちの矢の攻撃が無いことでその事を悟り、エーギルに船の回りを回るように合図して、その間にクロスボウをマストのてっぺんの射撃台から射ち続けた。



騎士たちも舷側からロングボウを射った。





海賊たちは側面と頭上からの矢の攻撃で隠れる所もなく一方的にやられてしまい数名が射倒された。





残りは戦意を失いすべて甲板下に逃げてしまい甲板上には負傷した海賊以外誰もいなくなってしまった。




舵すら放り出され船は漂うだけとなってしまった。




イングマルはエーギルに合図して船を横付けして乗り込むと負傷した海賊たちを縛り上げ、そのあと甲板のハッチから船倉に向かって「降服しろ!」と呼び掛けたがまったく返事が無かった。




しばらく叫び続けたがいつまでたっても反応がないのでやむ無くイングマルはすべての甲板下に通じる出入口や点検口さえも釘で打ち付け出てこれないようにした。




一旦自分の船に戻るとたくさんの目潰しと漆喰用の石灰袋をなん袋も持ってきてリバティコンティネント号に運び込んだ。




騎士たちも皆手伝いに船に乗り込んできた。




その後船倉のハッチの格子の隙間から目潰しと石灰袋をドサドサとぶちまけた。




船首から船尾までのすべてのハッチから粉をぶちまけた。





さらに鍋に炭火を持ってきてその中に硫黄のかたまりを入れ、燃える硫黄の煙を通気口から流し入れた。




しばらくすると数匹のネズミが苦しみながら船倉のハッチの隙間から飛び出してきて次に激しく咳き込んで苦しみ泣きわめく声が船倉から聞こえてきた。





男たちは格子戸にしがみついて「やめてくれーッ!助けくれーッ!降参だーッ!降参するーッ!」とさけんだ。





イングマルは中央のハッチを開けると海賊たちが飛び出してきて次々と倒れ込んでゲーゲー吐いていた。




負傷してすでに縛られている海賊たちも気の毒そうにその様子を眺めていた。





すぐに全員を縛り上げて騎士たちに「こいつらを見張っておいてくれませんか?」と聞いた。





騎士たちは「引き受けた。おぬしはどうする?」と聞いた。




イングマルは「もう1隻グレートパッション号に行きます。」と言って船を指差した。



積み荷を満載しているのでまだ視界内にいる。





騎士は「おぬし一人で大丈夫か?・・・って聞くまでもないか・・・。」と呟いた。



イングマルはにっこり微笑んで「すぐに戻ります。」と言って自分の船に乗り込んだ。




「さあもう一丁!忙し忙し!」と言って急いで「グレートパッション号」に向かった。










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