第315話  海上戦6






海賊船は舵が効かなくなり、同じところを回るだけになっていた。




エーギルは船を海賊船の真後ろにピッタリと付け、イングマルはマストの射撃台から隠れている海賊を次々と射倒していった。



海賊たちは何とかしようと外に出ればすぐにイングマルのクロスボウに射たれてしまう。





海賊たちは完全に戦意を失い甲板下に隠れてしまい、海賊船は海を漂うだけになってしまった。





イングマルはマストから降りて剣と小型クロスボウを背負い、エーギルに海賊船に横付けするように合図した。




エーギルは「何をするんじゃ!」と聞いた。



イングマルは「乗り込む!」とさけんだ。




エーギルは「ダメじゃ!このままアントウェルペンに向かう!」と叫んだ。




イングマルは再び顔を真っ赤にして「何言ってるッ?!」とさけんでエーギルのそばに駆け寄ると「今が勝機だ!僕の船を傷つけたやつら全員皆殺しにするんだッ!!」と叫んだ。





エーギルは「バカもんッ!!冷静になれッ!目的を忘れるなッ!わしらの仕事は罪人の護送だろうッ!?」と怒鳴った。




イングマルは「でもッ!?」と叫んだがエーギルは「船長はワシだッ!!ワシの言うことを聞けッ!!このままアントウェルペンに向かう!」と一喝した。




騎士たちは二人の激しい剣幕に何も言えず、黙って成り行きを見ているだけであった。










船は海賊船を残したまま離れて行った。






イングマルはだんだん小さくなって行く海賊船を眺めていると高ぶっていた感情も治まっていき「まあいい・・・今度会ったら絶対・・・・。」とつぶやいた。














海賊もイングマルも気づいていなかったがこの海賊船はイングマルに因縁のある船だった。




かつてイングマルが軍艦カール・ド・ルシュキ号に乗っていたときに襲撃された船だった。




優秀なロングボウの射手と戦闘員との戦いで危うくやられてしまいそうだったのをイングマルが3本のクロスボウで海賊船の船長とロングボウの射手、戦闘隊長を射倒し何とか退けることができた。






海賊船の船長はその後回復したが後遺症で左肩を動かすことが出来ず、背中に大きな傷が残り痛みで仰向けで眠ることが出来ない。


うつ伏せか椅子に座って机に伏せて寝るしかできなくなってしまった。






ロングボウの射手は腕と足の筋を絶たれて、もう弓を引くことは出来なくなってしまった。






戦闘隊長は矢が頭蓋骨にまで達する傷で左目を失明し、ずっと顔面の奥の痛みが治まらなかった。




そのため船長も戦闘隊長もいつも苦痛に顔を歪めイライラしてますます凶暴になっていた。





周辺海域で最も凶暴な海賊となって荒らし回り、人々から恐れられていた。






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