第253話  買い物





イングマルは造船所のあるビサントの町に向けて出航した。




陸の見えるギリギリの距離を保って移動したが慌てて出航したので途中の港町に寄って必要な物を探すことにした。



隣の港町でここでも船を陸から見えない所に隠しておいた。




金が無いので誰でも出せる市を探して回り、市場の責任者の許可をもらい手押し車を借りて船から炭や干物のスモークを持ってきた。



市場の端でゴザを敷いて炭やスモークを並べたがどこにでもある商品なのでそれほど売れなかった。



仕方ないので炭を起こして船から持ってきた七輪の上で干物のスモークをあぶった。



ほどよく熟成した魚のスモークはとてもいい臭いがして辺りに漂い客が集まってきた。



やがて船の煮炊きの燃料用に炭とセットで買っていく人が出てきて持ち込んだ分はすべて売れてしまった。





すぐに片付けして市場を見て回り艤装屋で羅針盤を購入した。


中古だがちゃんとガラスのケースに入っている。


これ自体そんなに精度のいいものではないが今使っている水桶に浮かべて使う物よりははるかにましである。



さらに分度器やメジャー、砂時計それに近隣の海図を購入した。



海図はいい加減な物だが町や港の名前やおおよその位置関係方角が書かれている。



あると便利だった。






それらを購入し市場の事務所で手数料を支払いすぐに出発しようとしたが衛兵数人がやって来て手配書を見ながら質問してきた。




衛兵は「お前!名前は?!」と怒鳴った。




イングマルは「はあ?アウグスト・ブルックですけど?」と話したら衛兵達はいきなり剣を抜いて斬り掛かってきた。



イングマルは剣をかわしながら「ちょっと!いきなり何するんだーッ?!」と叫んだ。




衛兵は興奮したまま「うるさい!おとなしくしろ!」と怒鳴った。




イングマルは「何なんだ?!僕が何したって言うんだ?!」となお聞いたら衛兵は「知るか!お前を見つけ次第殺せと命令が出てる!海賊の一味だろう?!」と言った。




イングマルはビックリして「なんでか?!とんでもない誤解だ!濡れ衣だ!」と叫んだが無駄だった。



衛兵は手柄を挙げようと必死になって「死ね!死ね!」と言って剣を振り回した。



イングマルは「いい加減にしろ!」と言って足を掛けて衛兵の一人をこかすと顔面から地面に落ち鼻が潰れて伸びてしまった。



「ヤローッ!殺りやがったな!」と益々ヒートアップして殺気だってイングマルに襲いかかってきた。




イングマルは両手が荷物で塞がれているので相手の足を器用に掛けて全員こかすとやっと荷物を置いて衛兵の持っていた槍を拾い上げて全員の顎先を打って気絶させた。






大勢周りで見ていたがイングマルは構わず荷物を持ってさっさとその場を後にした。





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