第213話 大掃除
「クソッタレがー!」ギャング団は叫んで抵抗しようとしたがあっという間に手足を切られ、完全武装の傭兵達を前になすすべもなく、ポケットにあった小さなナイフを振りかざして部屋の中央で塊まるしか無くなった。
傭兵達はそんな彼らをニタニタ笑いながら眺め「ヘッヘッヘッ、ホレホレどうした?もう終わりか?後がないぞ。」とあざけるように言った。
隣の傭兵は彼らの死体を入れる麻袋を用意していた。
それを見てギャング団はみんな「チクショーッ!チクショーッ!!」と口々に叫んだ。
そんな時、窓からタールまみれ獣脂まみれの塊が「ドサッ」と落ちてきた。
クサイ塊はやがて起き上がり、それが人である事がわかた。
窓の側にいた傭兵達は「な、なんだお前は!」と叫んだ。
汚いタールまみれのボロ布を頭からかぶり顔はよく見えない。
だが答えを聞く前に身をもって理解した。
二人の傭兵はほとんど同時に首を切られ血を吹き出してその場に倒れた。
傭兵達は「野郎ーッ!!」とさけんでイングマルを取り囲もうとしたがそんな隙もなく次々と急所を刺され丸太が倒れるようにバタバタと倒れていった。
あっという間に傭兵と用心棒達は全員倒されて側近と領主だけになった。
「ピチャピチャ」と血の滴る音をたてて領主の前に近づくと領主はボウゼンとしていたがやっと我に帰り「ひッ!く、来るなーッ!やめろーッ!」と叫んだ。
しかし傭兵の剣を拾い上げたイングマルは領主と側近の首をあっさりと切り落とした。
イングマルは領主の体を切り刻みバラバラにすると落ちていた麻袋に詰めて紐で閉じると肩にかついで出ていこうとした。
おもむろに振り返り、固まってへたり込んでいるギャング団を眺めると「あんたたち、前に強いもんになるって言っていたね。」
「強さや乱暴の行き着く先はこんなんだよ。あんたらはこんなもんになりたいの?」そう言うと微笑んだ。
しかし血まみれのイングマルはまともな人には見えず、獣にしか見えなかった。
頬に伝わりしたたり落ちる血は涙のようにも見えた。
やがてイングマルは音もなく消え去った。
イングマルはその足で領主の死体をわからないように捨てると川で体をきれいにしてから造船所に帰った。
領主が行方不明になったことはすぐに明らかになったが、関係者しか知らされず真相は分からずじまいだった。
生き残ったギャング団は誰にも事件のことを話さなかった。
イングマルはすぐにばれると思っていたのでいつでも逃げ出す準備をしていた。
しばらくして造船所にギャング団の生き残りがぞろぞろやって来た。
親方もイングマルもみんなも警戒したが彼らは神妙な顔で「ここで働かせてくれ。」という。
親方とイングマルは顔を見合わせて驚いて「当分は賃金も出ないし今までのような生活はできないし他の子等と同じようにするんだぞ、お前らに出来るのか?」と親方はいった。
彼らは「ああ、努力する、命が助かっただけでも十分だ。」と言った。
イングマルは「親方がボス、ベルナールが御意見番、アンリ、クレインがみんなのリーダーだ、従える?」ときいた。
みんなは「ああ、従う。」とつぶやいた。
イングマルは親方をみると「まあ、いいんじゃない?」と言った。
親方も「お前がそう言うなら」と言ってとりあえず試しにみんなを受け入れることにした。
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