第212話 真悪
彼らはケガをしてはいるが3つのギャング団が集まっているので数は30人ほどいた。
不思議なもので昨日まで殺し合いをしていたとは思えないほど結束している。
やはり共通の敵を前にすれば、すぐ仲よくできるのは古今東西共通の原理みたいなものなのだろうか?
だが包囲されようとどんなにすごまれようと負傷している彼らはイングマルの敵ではなかった。
縦横に移動しながら強そうであまりケガしていない者から順番にこん棒で殴っていった。
剣の戦いのほうがそれほど力が要らないので早く片付くのだがこん棒は確実にすねや手の甲、あごなどを狙ってうち据えるので少し時間と力が必要だった。
しかしそれもわずかな違いにすぎず、彼らは一度もイングマルに当てることもかわすことも出来ず全員打ちのめされてしまった。
あっという間に30人が伸びてしまい親方も飯場からのぞいていた子供たちもただただ驚いて見ているだけだった。
彼らは結局何も出来ず、捨て台詞を吐くことすら出来ずによろよろと去っていった。
彼らが去った後みんな恐る恐る出てきたが、イングマルを取り囲んで感謝の言葉ではなく批難と文句を言った。
「そんなに強いんだったら最も前から助けてくれたらよかったのに!なんで今までほっといたんだい?!」
「あんなにひどいことをしたらあいつらまた仕返しに来るんじゃない?そしたらもっとひどいことされるかも?どうすんの?」
「また連れ戻されるのはやだよー!」
「うェ~ン、怖いよ~。」
みんな怖がって泣き出してしまった。
イングマルは困ってしまったが「当分は大丈夫だから」と言って落ち着かせた。
しかし確かに彼らのケガが治ったらまたやって来るかもしれない。
また何かしらの対策を考えねばと思っていた。
それから数日は仕事の合間にイングマルはギャング団の動向を探るため監視に行った。
彼らは焼け残った倉庫のひとつをねぐらにしていた。
リーダーや幹部連中は彼らだけで居るときは大きいことを言って「この前はたまたま油断したからだ!あんなやつケガしていなけりゃイチコロだぜ!」などと息巻いた。
うさを晴らす相手がいないのでいちばん下ッパの者を捕まえていじめたりしていたが、それらの者もやがて一人、二人と逃げ出していった。
そんなある日、彼ら全員に領主から呼び出しを受けた。
彼らは「また金のことで文句を言われるのか?やれやれ。」と思ったが一応出掛けた。
いつもの応接室ではなく中庭の先にある倉庫みたいなところに通された。
3つのギャング団25人全員が倉庫に入り待っているとやがて領主と側近が現れた。
「お前達全員いるのか?」と領主は全員を見渡すと尋ねた。
「ご機嫌うるわしゅうございます、領主様。上納金の方はもう少しお待ちくだださい。」
「今度3つのファミリーが集まって心機一転、再開し・・・。」と言いかけたところで領主は「お前たち、今日までご苦労だった。」といい、手を上げて合図を送ると部屋の奥や入り口から完全武装の傭兵や用心棒がぞろぞろと現れた。
「領主様⁉」とギャング団全員驚いて回りを見回した。
領主は「貴様らの騒ぎのせいでわしのこれまでの計画は台無しだ!近隣の領主だけでなく国王からも文句を言われたぞ!」
「せっかくのこれまでの苦労が水の泡だ!」と叫んだ。
「お、お待ちください!すべては領主様のための・・・・」と言い訳しようとしたが「黙れ!!クズの言い訳など聞く耳持たん!!」と領主は叫んだ。
「だが失った信頼を一気に挽回することは可能じゃ。これまで世間を騒がしてきたクズどもを全部討ち取り大掃除すれば町の治安を回復した立役者として名声を得れる。」と自信たっぷりに言った。
「何いってんだ!全部オメーのさせたことだろが!」とギャング団は叫んだ。
「なんのことだ?ワシはなんも言ってはおらんぞ!」
「お前らからなんも受け取ってはおらんし、会ったこともない。」と領主は薄笑いまま言った。
「テメーふざけんな!!口封じする気か?!」とギャング団は叫んだ。
「クックックッ、さあみんな、殺れー!!」
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