第205話  罠づくり





イングマルは頭の中でいろいろとシュミレーションして良い手を考えていたが彼等が集合する前にアジトを1つづつこちらから襲撃して行こうかと考えた。




かなり具体的に考え、彼等が人買い団なら迷わずそうしただろうが結局断念した。




彼らのアジトには戦闘には参加できない小さな子もいる。



万が一その子らが巻き込まれてはいけないし、町の中で騒ぎを起こせば何が起こるかわからない。




それにこちらから襲撃すれば彼らと同じ土俵に立つことになり、大義名分が失われもうひとつギャング団が出来ただけと世間に思われかねない。




やはり造船所で迎え討つことにした。



幸い二つのギャング団は狼団とは接触していないようで、先の戦いの詳細は知らないようだ。




イングマルは前回の戦いを基本にしてもうひとつ新しい仕掛けを作るため近所の漁師さんのもとを訪ねて回り、たくさん漁網を借りてきた。



数日かけて夜中にそれらを使って大がかりな罠を作った。




基本的には猪猟の罠と同じなのだがそれを大規模にしたものだった。



前回足場で作った通路をもう少し広げ長さ30m巾3mの空間を作り、底に丈夫な漁網を広げた。



通路の両端に船のフレームを竜骨に固定するシャーレグという丸太で組んだ三角のやぐらを固定してその上からロープを垂らして漁網の両端を結んだ。



ロープには製材用のニレやカシの丸太数本結んだ。



罠が作動したとき漁網の高さが2mぐらいの位置になるようにロープの長さを調節し丸太をジャッキで持ち上げてロープで固定した。



獲物が罠のなかに入りこのロープを切れば丸太が落ち漁網が持ち上がる仕掛けだ。



イングマルは全部のギャング団をまとめて網でとらえようと考えている。




何度かテストしてから漁網が見えないようにおがくずを撒いておいた。




さらに上からもうひとつ漁網を被せれるように足場の上にのせた。


紐を切れば自然に落ちるので簡単だった。


この漁網は絡まりやすいように目の小さな軽い物を使った。





イングマルは嬉々として仕掛けを作り、早く罠にかかりに来ないかと楽しみにしていた。





さらに長さ4m程のタモやニレ、トネリコの木で出来た丈夫な竿をたくさん作り竿の先50cm位のところまで鉄板を巻き付けその上からさらに革をまいて麻紐で止めた。



槍のように使うのではなく、はたくようにしてバンバン討ち据えるのである。



手元をはたきのように動かせば、しなった木の先端の鉄板部分はかなりの破壊力がある。



鉄板のままでは大怪我するので革を巻いてある。





仕掛けをすべて準備したら目立たないようにカモフラージュして彼らのアジトを見張った。




ネズミ達に造船所が24時間見張られるようになり、かれらのアジトの人の出入りがはげしくなってきて、武器を集めているのが見えた。



襲撃は今晩か明日だろうと判断して親方に罠の説明をして万が一自分が紐を切れない時にやってもらうため、仕掛けの紐を切る場所とタイミングを伝えた。





もし失敗したときのためベルナール、アンリ、クレインには避難してもらった。



イングマルは準備万端完全武装で彼等がやって来るのを待ち構えた。



横で親方も緊張して待機していたがイングマルがあまりにも嬉しそうにはしゃいでいるのを見て「こいつは何がそんなに嬉しいのか?」と思って少々あきれて見ていた。











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