第187話  船着き場






イングマルはフェルト子爵らを倒した後、国境の川を移動しながら旅を続けていた。



いつものように柳で編んだカゴを馬車いっぱいに積んで移動しながら町で売りまた次へ移動する。







緊張から解放された本来の旅の生活を楽しもうと思っていたのだが、日が経つにつれて体調の異常を感じるようになっていた。




気がつくとボーとしていたり、何だかだるーくて普段は何でもない作業が全然はかどらなかったり、上手く出来なかったりとどうも調子が悪い。




馬や犬の世話は体が勝手に動くようにして出来るのだが、それ以外は上手くいかない。


風邪でも引いたのかと思ったがそのような辛さや熱といったものはないのだが、寝ても食べても症状は改善しなかった。





これまでの日々の疲れが今頃出てきたのだろうか?



何日か魚釣りをしたりしてゆっくり過ごしてみたが商品のカゴ作りもなかなか進まず、旅費も心もとなくなってきた。





そうは言っても砦を出るとき自分の金貨を数100枚持ってきているのだが、この金はいざという時のための非常時に使うことにしている。


だから 体調不良ぐらいで 普段使いで使うわけには行かなかった。






川岸沿いに移動しながらだいぶ下ってきて、 川幅 も広くなり 向こう岸が遥か向こうに見えるようになり 街も大きくなってきた。


河を行き交う船も多く見るようになった。



大きな倉庫が続いている場所にやって来て舟溜まりがあり、荷揚げ場で多くの人が荷上作業を忙しくしていた。




そこの掲示板に「短期2ヶ月、荷揚げ作業、雑務運搬その他、馬車持ちは手当2割増し」という求人を見つけた。



手持ちの資金も残り少ないのでこの求人に参加することにした。



近くにいた人に話を聞き指示された場所までやってきた。



倉庫街にある一つの大きな倉庫だった。





この時期船が多く出入りするので積荷の上げ下ろしの運搬に人手が足りない。




他にも滞在している船員の食事宿泊の提供、さらに馬車を持っている 者には船から降ろした荷を町の中継地まで運ぶ作業もある





イングマルだけでなく各地からやってきた多くの人々が仕事を求めてやってきていた。


イングマルと同世代の者も大勢いた。



早速親方の元に行くと大勢並んでいてイングマルもその列に並んだ。



子供から年寄りまで色んな人がいたが、短期の仕事なのでいちいち身元確認はせず誰でもいいようだった。



登録を済ませると番号札を渡され、すぐ作業が始まった。





イングマルはこれからは偽名を使いアウグストと名乗ることにした。







船から下ろされる麻袋を担いで長いアリの群れのように一列になって倉庫に運び、別の荷を倉庫から運び出し船に積んで行く。


麻袋のほか樽もある。




やることは馬車の時と何ら変わりがない。


がその量は桁違いだった。



大小次から次とやってくる船を順序よくさばいて、単純な作業を1日行った。




多くの者は経験者のようで段取りよく、いちいち指示されなくても動いている。




日がくれると指定された酒場でウェイターみたいな仕事もしなければならなかった。




馬車を持っていたイングマルには他にも倉庫がいっぱいになってから仕訳した荷を数 km 離れた町の中の中継地に運ぶ仕事もあった。






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