第148話 王都にて
スロトニア王都の城壁を越えるとすぐに人で溢れ、彼女達は人に酔い目が回るようだと言っていた。
フランシスは連れ戻った敗残兵を宿舎に預け、みんなと別れて王宮へ向かうことにした。
フランシスは「用事が済んだらすぐ後を追う」といい皆と別れた。
イングマルは念のため、残りの移動先と集合場所を伝えておいた。
王都に来るのは久しぶりでマクシミリアン学園にも近いのだがイングマルは知らないふりをしていた。
皆はイングマルが王都の地理に詳しいので不思議そうに見ていたが、過去のことは誰にも話していないし聞かれもしなかった。
気にしつつも聞いてはいけないような気がして皆聞こうとはしなかった。
わかれば何かが壊れてしまいそうな気がしていた。
どの国でもそうなのだろうが王都の中にいる限り、地方で起こっている事は絵空事のようで実感がない。
王都の人々には想像もできないし、しようともしていなかった。
起こっていることは情報としてかなり知っているのだが、ただそれだけである。
イングマルはこのスロトニア国ではいまだにおたずね者という立場なので、あまり長居はしたくなかった。
物資を補充し迷子になるといけないのでみんな馬車からは出ないようにしていた。
フランシスとジャン・ポールは、王宮内で再会できた。
ジャン・ポールは少し先に帰って来ていたが、帰還した兵達の事務手続きに追われなかなか王宮に来れなかった。
王宮で再会した二人はこれまでの出来事をお互いに報告しあい、生きて再会できたことを喜んだ。
二人は早速、敗残兵の1部が人買いと合流してしまい地方では完全な無法状態で彼らを止めるものが何もない状態にある現状を、王に会って訴えようとした。
王宮内では、会う人会う人がフランシスやジャンを見て驚いていた。
王の側近とあってこれまでのことを話した二人だが、話がどうも噛み合わない。
このたびの戦いが勝ち戦として扱われている。
2人とも呆れてしまった。
側近は話を聞き、全く正反対の話になっていることに訳が分からなかったが、とうとうパール司令官が嘘を言っていることがばれてしまった。
側近は王に報告したものかどうか困ってしまったが、黙っているわけにもいかない。
報告を受けた王は怒りと呆れで憤慨していたが、すぐ冷静になりどうしようかと悩んだ。
戦勝祝賀会まで大々的に開いてしまって、今更負けでしたとは言えない。
外国との戦争ではなく、国内の犯罪集団ににやられたのだ。
何より困ったのは、以前より規模を大きくした賊が暴れ回っていることだ。
早くなんとかしないと、王の権威とメンツは丸つぶれである。
パール元司令官は初めうちはねぎらいの人々が連日訪れ、接客に忙しかったが内心ビクビクしていた。
いつばれるかハラハラしながら過ごしていたが、ジャンとフランシスが帰ったことがわかると瞬く間に来客は来なくなり、自分の立場が危ういことを直感した。
戦場から逃げた卑怯者。
それだけでも大変なことだが、彼にはもうひとつ許されない罪を犯している。
これだけは、なんとしてもばれないようにしなければならなかった。
パール伯は、以前から懇意にしているニコラス・エランにどうすればいいか相談することにした。
ニコラス・エランは手持ちの駒の人買い軍団が勝手に動いてしまって制御ができない事態をなんとかしようと忙しくしていたが、パール伯に泣きつかれたのでめんどくさいと思いながらも会いに行くことにした。
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