第147話 王都へ
フランシスはこの現状をなんとかしないといけないと思い、王都へ行き現状を訴えようと考えた。
もう1人の副官だった、友人のジャン・ポールとも連絡を取りたかった。
そのジャンは本隊を率いて逃げた兵を集めて回り、300程度の兵をなんとかまとめ王都への帰路についていた。
大きな街で物資を補充し、町の有力者に借用書を書き、死者、行方不明者の名簿作り、負傷者の手当てと休む間もないほど忙しかった。
とにかく物資が不足していて、どうにも混乱続きだった。
フランシスは「単独で王都へ向かいたい。」とみんなに言った。
だが、イングマルはやめた方がいいと反対した。
今帰れたとしても混乱が収まるとも思えないし、総司令官が逃げ帰ったことを考えると責任を負わされるようなことがあるかもしれない。
それでもフランシスは、現場指揮官としてこのままの現状を放置できないという。
イングマルはみんなとも相談し「臨時にこの馬車を敗残者の回収のための隊として、回収した兵を大きな街に預けて回る作業をしようと思うのだが。」と提案した。
みんな少し不安だったがフランシスもみんなも同意し、早速討伐軍が掲げていた旗とフランシスの家の紋章と王家の紋章を掲げ、馬車の先頭に馬に乗ったフランシスが先導し道中の村や町で自分たちのことを知らせ大量の食料などの物資を補充つつ移動した。
やがて、各地に隠れ潜んでいた者たちがフランシスの姿を見ると少しずつおそるおそる現れ合流していった。
みんな毎日、いわゆる落ち武者狩を恐れて不安な日々を送り盗みをしながら食い繋いでいた。
けが人は馬車に乗せ、温かい食事をとると泣いて喜んでいた。
イングマルはフランシスに闘いの詳細は聞いていたので、100人前後の行方不明者がいると思われた。
敵と合流してしまったものがいるが、どのくらいいるのかよくわからない。
イングマルたちはハーバーの戦場の周辺をあちこち回り、山や森の中も回って隠れていた兵たちを回収していた。
山や森ではラッパをならしたり太鼓をたたいたり大声で呼び掛けながら移動して、イングマルもすっかり声が渇れてしまった。
ある程度の数が集まったら、街によって有力者と交渉し資金や物資を貸してもらった。
イングマルたちは当初手負いとなっていた敗残兵と何らかのトラブルが起こるのではないかと不安だったが実際はそのような事はなく、みんなを救いの女神のように思い心底感謝していた。
みんなも自分たちを追っている人買いと戦ってくれた人々なので、できるだけの手当をした。
兵の中に故郷が近いものがいれば送っていった。
ハーバーの周りからだんだんと範囲を広げて行き、かなり回ったがもうほとんど兵が見つからなくなってきたので一行は王都に向うことにした。
王都出身の者も一緒に行くことにして怪我人は馬車に乗せ、歩ける者は歩いた。
この間人買い団と遭遇することはなかった。
歩くものにあわせたゆっくりした移動だったが王都に近づくにつれ、人の往来は激しくなり賑やかになってきた。
みんなは初めて見る王都に興奮し、キョロキョロしていた。
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