第132話  皆の村







 イングマルたちには自分の行っていることが正しいのかどうかわからない。



しかし今のところ全員無事生きているのでこれでいいのだと判断し、考えられるあらゆる手を打って行く。




自分が人買いならどうするか?イングマルはいつもそんな風に考える。




移動中も防衛に適した場所を見つけてはチェックし、いくつか簡単な砦も作ってみた。



作った砦に移動して、前にやったのと同じことをしてみた。




ダイアナとパメラの村に到着してから、しばらく砦にこもって敵を誘い出してみたが何も起こらなかった。




餌が良くなかったのか?



イングマルは魚釣りでもしているつもりのようだ。



皆は土木工事のスキルも身に付いて女子力ならぬ、どかた力をアップさせていた。



皆は戦いがなかったのでホッとしつつも、何日もかけて作ったのに無駄になって複雑だった。






やむなく次の目的地に移動した。




森を抜け、途中の湿地をいつものように調べていた。



広い湿地に突き出した半島のようになっているところがあった。



背後は深い森で、森の背後には山がある。



半島状の所は砦にもってこいで串に刺した団子のような形で、一番奥は平坦にすれば1haほどの面積がある。



ここも砦に向いていると思い、地図にチェックしておいた。



湿地は遥か先まで続いており、たくさんの魚が見られた。







イングマルは一時的な砦ではなく、もっと恒久的な自分たちの村ができないものか?とこの頃考えていた。



全員を届けても数名は故郷をなくしたものもいる。





どこかの村に身を寄せれば彼女たちは歓迎されるだろうが、お客さん扱いから村人として受け入れられるためにはおそらく村人の誰かと結婚しなければならないだろう。




彼女たちが本気で誰かを好きになってそう望むのならそれでもいいだろうが、村人として受け入れらるために引き替え、みたいなことでは彼女たちの真の自由と幸福と言えるのか?




いらぬおせっかいかもしれないが、誰はばかることのない身も心も共に自由な幸せが彼女たちにあってもいいのではないか?その資格と権利は十分にあると言えるだろう。




彼女たちの村、少なくとも彼女たちの家と言える場所が作れないものか?とイングマルは考えていたのである。






みんなはイングマルが魚釣りもせず、高台でずっと思案しているのを見て「また砦でも作ろうとしているのか?やれやれ。」と思っていた。




ローズがイングマルに「また砦を作るのかい?」と聞いてきた。



イングマルはしばらく考えてから、思っていることを話した。





「村を作る?!」


ローズは驚いたが何かがきらめいたようで、すぐに馬車からノコギリやらシャベルを持ってきた。





「いやいや、今じゃないよ。みんなを届けた後の話だよ。ここなら防衛は完璧だし、いざというときは船で湿地に逃げることもできる。山では放牧もできるし、湿地には魚も豊富だし、泉もあるし。」



「まぁ、なんにしても、今を無事切り抜けないといけないけどね。」


というとイングマルはその場を後にした。





ローズも自分たちの村や家を空想して期待を膨らませたようで、どんな村が理想かとフリーダたちと話して盛り上がった。




レオンも誰にも気兼ねしない、しがらみのない場所ができるのか?と期待を膨らませていた。




レオンとベラにはみんなが初めてしたように、短剣とクロスボウの護身術を1から丁寧に教えていた。




2人とも体が硬くなかなか上達しなかったが、何度も繰り返して稽古している内少しずつ上達するようになっていた。



レオンは元々力が強いので、大型のクロスボーも操作できるようになった。




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