第125話 追憶の人2
皆は男と別れ旅立った。
みんなも男の生き方に思うところがあったようで、それぞれいろんなことを考えているようだ。
しばらく後、峠近くの展望の良いところに来ると男のいた村が眼下に一望できた。
休憩して眺めていると、村から煙が上り出した。
火事か?
煙は1本や2本ではなく、村中から煙が上がり出した。
「火事では無い、襲撃だ!!」イングマルはそう叫ぶと、急いで村に引き返した。
村には数十人の盗賊団がやってきて、家々を襲い火を放ち金品を奪い女を見つけると捕まえた。
村人の抵抗も虚しく、あっさりやられてしまった。
広場に、村人全員が集められた。
村人多数が負傷した。
盗賊団のリーダーの側に女が1人くっついていた。
薄笑いで村人を眺めていた。
その笑い顔に見覚えがあった。
長老や村長は「ベラ?お前はべラじゃないのか?!」と叫んだ。
そう言われた女は、笑いながら皆を見ている。
「なんでお前が?一体どういうことだ?」と長老は聞いた。
「懐かしいわね長老さん、村長さん。私みたいな女のことをよく覚えていてくれたわね。さすがに売った女の事は忘れなかった?それともとっくに死んでいると思っていたのが現れて驚いた?」
村人たちは、やりとりを聞いて驚いていた。
「何を言ってるんだ!お前の故郷だろう?なんでこんなことをやらせるんだ?!」
村人は口々に言う。
「みんなどんな気分?狩られる気持ちは。怖いでしょう?苦しいでしょう?悲しいでしょう?悔しいでしょう?」
「これが奴隷の一生よ。」
「私を売った時は、こんなことになるなんて思いもしなかったでしょう。」
「私はこの日のために今日まで生きてきたのよ。やっと願いがかなって今とっても幸せよ。」そう言うと、気味わるく笑った。
イングマルたちは、飛ばして村の近くまで来て完全武装になり森の中に待機した。
イングマルが偵察に行き村の様子を見た。
広場に村人が集められ、盗賊団20人近くに囲まれている。
イングマルは馬車に戻り、すでに完全装備で待機中の騎射の上手な5人を指名した。
6人でクロスボウを持って駆け出し広場に向かうと1列縦隊で突撃し、走りながら盗賊団の周り70mほどの距離を取りながらクロスボーを撃ってゆく。
2周して7人を射倒すと、そのまま森の方へ走り去った。
怒り狂った盗賊団は、急いで馬に乗り追いかけてくる。
追いかけてきた盗賊団十数騎は森まで50mほどのところで森の中の馬車からクロスボーの一斉攻撃が始まり、あっという間に全員撃たれてしまった。
数名が走って村まで戻ろうとしたがすぐに背後から撃たれた。
イングマルたちは盗賊団を撃退したのを確認して直ぐに移動し村に来てみると、盗賊団はもう3人しかいなかった。
彼らを完全に取り囲んでクロスボウを構えた。
盗賊団の生き残りは村人を人質に剣を構え「近づくな!」とすごんでいるが、イングマルは構わず剣を抜いて近寄って行こうとした。
しかしローズが前に出てイングマルを引きとめた。
「あんたら、もう勝ち目はないよ!降参しな!」ローズは叫んだ。
「うるさい!これが見えないのか?!近づくな!」3人の盗賊はそれぞれ村人3人の首に剣を当てている。
ローズは「あんたら男だろ。往生際が悪いわよ!」と叫んだ。
盗賊たちはローズの声を聞いて「お前、女か?」といった。
「そうよ。何ならあたしが引導渡してあげるわよ。」そう言うと、ローズ剣を抜いた。
盗賊たちはきょとんとしている。
「どうしたんだい?!女と勝負もできないのかい!玉なしども!!」とローズは叫ぶ。
そう言われて盗賊たちは「舐めやがって・・・!」と人質をはなしてローズと対峙した。
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