第105話 教会の悪魔2
全員が入れるほどの大きな建物は教会だけだったので、みんなそこに入って歓迎会が催された。
ご馳走がいっぱい出されて、みんな大喜びで食事にありついた。
しかしこの村には、女の人の姿が全然見えない。
話を聞くと女はみんな集団で出稼ぎに行っていて、数ヶ月おきにしか帰ってこないという。
女にしかできない細やかな仕事だそうだ。
みんなは紡績か織物の仕事か何かと思って、深く考えもしなかった。
相変わらず主役はローズだったので主賓を任せてイングマルは、教会を出て馬車や馬を見て回った。
犬のトミーは、おとなしく馬車で寝ていた。
イングマルはしばらく村を見て回った。
小さな村だが、女たちがいないのは大変だなぁと思った。
「男はその間、畑仕事か?それとも遊んでいるのか?少し羨ましいかも。」と思ったりしながら村を見て回るが、どの家も農機具は古びて使われた形跡がなく、長らく放置されているようだ。
本当に男は遊んでいるのか?
聞いてみようかどうしようか迷いながら、教会に戻った。
戻ると宴会は終わっていて、みんな疲れたのか眠りこけていた。
ローズも仰向けでお腹を出して、ガーガーいびきをかいて寝ていた。
イングマルはローズをゆり動かして起こそうとするが、全く起きない。
食事のサラダを丸めて、口や鼻の穴に突っ込んでみた。
鼻の穴から、にんじんが出たり入ったりしている。
イングマルはおかしくなって笑っていたが、調子に乗って暖炉の消し炭みを拾ってきてローズの顔に塗りたくった。
眉毛をつなげてみたり、ひげもじゃにしたりして落書きした。
それを見てイングマルは、ひとりで笑い転げていた。
しばらく落書きしてイタズラしていたが、あまりにローズが起きないのを不審に思ってきた。
揺り動かしてみるけれど、全く起きようとしない。
イングマルはローズのほっぺたを、思いっきりひっぱたいた。
それでも起きない。
「ローズ!!」と叫んでほっぺたをしばき続け下腹をつねったりしたが、イングマルもだんだん力が入らなくなって急に眠気が襲ってきて、そのままローズの腹の上につっぷして倒れ込んでしまった。
気がつくと目隠しと猿轡をされ、手足を縛られて袋のようなものに入れられているようだった。
イングマルはすごく恥ずかしくなった。
袋に入れられていることではなく、「僕が守る」とか「いつでも相手してやる」とか偉そうなことを言ったことがとても恥ずかしい。
そんな偉そうなことを言っておきながら、こんなお粗末な結果となっている。
どうやら眠り薬が食事や飲み物に入っていたようなのだが、これが毒ならとっくにTHE ENDである。
眠り薬でも、結果は同じだろう。
少しエンディングが伸びただけでの話である。
もがいて暴れていると、思いっきり蹴っ飛ばされて顔だけ袋から出された。
目隠しと猿轡をとられた。
どうやら教会の中にいるようだ。
周りには、村人が集まっていた。
女達は縛られて、まだ眠っている。
村人たちは、品定めするように女たちを眺めていた。
イングマルは「何なんですかいったい?!」と言うと、「こいつ、もう起きやがった。おい、こいつ連れ出して、始末してこい。」と長老らしきものが、若い衆に言う。
「いいんですか?こいつまだ若いし、売ればいくらかになると思うけど?」と若い衆は長老に聞いた。
「男はいらん。いつもの通り、始末だ。」と長老は事務的に答えた。
「へ〜い、へい。」と若い衆はめんどくさそうに言うと、イングマルを担いで教会から出て行って、馬車に放り込んでどこかに向かう。
「ちょっと!何処へ行くんです?!どうなってるんです?」とイングマルは慌てて聞いた。
「お前は要らないんだと。気の毒だが死んでもらう。」と若い衆は馬車を御しながら、生ゴミを捨てに行くような感覚で答える。
「どうなってるんですか?村の人たちはどうしたんです。あなたたちは盗賊なんですか。!?」と生ゴミイングマルはもがいて叫んだ。
「ハハハ、俺達は村のもんだよ。今さっき人買いに知らせに行ったがな。
この村じゃ女はみんな、人買いに売ることになってんだよ。」
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