第92話  オルガの帰還2




イングマルは村の中で、柵の代わりになるようなものを探していた。




牧草を干す、架け棒が使えそうだった。数も多い。




架け棒は、3mほどの心棒に、十文字に固定した枝が、2〜3ヶ所ついている。




普通は、地面に心棒を直接たてて、枝の部分に刈り取った牧草をかけて、干していくのだが、この架け棒を横に倒して並べれば、高さ80cmほどのバリケードになる。




イングマルは、村の見取り図を地面に書いて、バリケードを、どこにどう並べれば、いちばん防御しやすいか、あれこれ思案しながらブツブツ言っていた。




ローズは、姿のみえなかったイングマルが、やっと戻ってきたと思い、「どこ行ってたんだい、?」 と聞いてみたけれど、相変わらずブツブツ言って、ローズが来たことも気づいていないようだった。



向こうへ行こうとしたローズを、イングマルは呼び止めて、「いつでも戦える準備をし、今夜は馬車で寝るように。」と伝えた。


取り越し苦労ならそれでいいのだが、山の上で感じた気配が気になって仕方がない。


ローズも緊張した。





イングマルは夜になると、馬車で架け棒を運び、家並みのすき間をバリケードで埋め、馬車と家並みとバリケードを使って、袋小路となるように配置した。



宴会の後なので、みんな酒を飲み過ぎて、すぐに寝てしまっていた。





イングマルは警戒し、悲観主義のイングマルは、あれこれ考えてしまう。


「ローズの時のこともある。」


「盗賊団と内通している村人がいたとしたら。」





嫌な予感は当たるもので、イングマルの予想通り、盗賊団がやってきた。






傭兵もいない村に、女いっぱいの一行がやってきた。


チャンスと思うのは当然だ。






30騎あまりの盗賊団は、馬に乗って堂々と村に侵入したが、聞いていた村の造りと違い、バリケードで行く手が妨げられている。



何度も曲がりくねり、それに沿っていくと、松明を掲げて、馬車が行く手を塞いでいた。





盗賊団がすべて袋小路に入ると、イングマルはバリケードで出口をふさいだ。


それと同時に、馬車と横の民家から、クロスボーの十字砲火が始まった。





暗闇で逃げ場がなく、盗賊団はパニックになっていった。


何騎かは、馬で柵を飛び越えようとしたが、バリケードは2重3重に並べてあったので、馬では超えることができなかった。




イングマルは、「この様子なら、もう大丈夫。」と、ローズに指揮を任せ、戦闘の真っ最中に、どこかに行ってしまった。



「ちょっと!任せるって、どこ行くの!」とローズは叫んだ。




聞く耳を持たず、さっさと闇に消えるイングマル。




ローズは任された以上、自分で考え、何とかしなければならない。


がやる事は決まっている。



荷台を盾にしながら、ひたすらクロスボウを撃つのみである。





数人の盗賊が、全身に矢を受けても、興奮して荷台に手をかけて、馬車に上がってこようとしたが、そこへローズの短剣が、男の顔と首に突き刺さった。



男は血しぶきをあげながら崩れ落ちていった。




ローズは「畜生!この厄介な時に!あのガキはなにやってんだ!」と言いつつ、再びクロスボウを撃っていく。




1時間ほどの戦闘だったが、一方的に盗賊団はやられてしまった。




村人は、報復を恐れて戦闘には参加せず、ただ見ているだけだった。









馬を捨てて、這って逃げ出した数名が、村はずれの盗賊の集合場所にやってきた。


全員、傷だらけである。



そこへ村人の1人が、走ってやってきた。





盗賊は「どうなってんだ!聞いてねぇぜ!ほとんど全滅じゃねえか!。お前!まさか、わざと嘘、教えたんじゃねーだろーなッ。!」と怒鳴りつける。



「そ、そんなわけない、! 男は誰もいなかったんだ!全員女だったんだ!本当だ!。

これがうまくいけば、おれも大もうけできたのに。」おどおどする村人。





「くっそー。これじゃ、もう当分仕事ができねーじゃねーか。!」と歯ぎしりする盗賊のリーダー。






「ほんとにねー。彼のおかげでうまくいきましたよ。」





「何がうまくって? 何!!。誰だ、てめぇは!!」




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