第84話  ローズの帰還3



イングマルはローズの家にたどり着くと転がるように家に飛び込んで「ローズ!」と叫んだが、ローズは短剣を構えて襲ってきた者たち全員を撃退していた。



男達数人が手傷を負ってへたり込んでいる。



両親もへたりこんで、ローズをなだめていた。



ローズはあちこちにアザができ、傷だらけで息を切らしていたがイングマルを見ると「こいつら、私を、・・・人買いに売ってたんだ。・・・初めっから・・・売るために・・・。」とつぶやいた。



幼なじみの男までもが襲撃に参加していた。



「ケン。アンタまでも・・・・子供の頃から一緒に遊んだのに・・・今まで何を考えて一緒に遊んでたんだい?・・・どんな気持ちで、私の顔を見てたんだい?・・・。」とつぶやいた。




ケンと言う名のローズの幼なじみは「ま、待てくれ、ローズ、俺は知らなかったんだ。ローズがいなくなってから聞いたんだ。本当だ、信じてくれ!。」

と手を伸ばして言い訳した。



「その手に持っている包丁はなんなんだい!」とローズは吐き捨てるように言った。




「これは・・・人買いがきたら・・・やっつけようと・・・・」と男はばつ悪そうにいいよどんだ。




横で転がって伸びていた男がようやくを動き出して「何言ってるんだ、お前が一番乗り気で殺ってやるって言ってただろうが。」とつぶやいた。




「ば、バカなことを言うな!俺がそんなことを・・・本当だ、!ローズ!」

とケンは焦って言った。




ローズは真新しい短剣を再び構え直し、手に力が入る。




それを見てイングマルはローズに「街外れでみんな待っている。ローズ、先に行ってて。」



そう言うとローズは荷物をまとめて家を出て行った。






しばらくしてから家から煙が上がり、やがて炎が上がった。




家の中にいたものはみんな悲鳴をあげながら、這って飛び出してきた。




最後にイングマルがでてきて、馬に飛び乗った。




炎の上がる実家をぼんやり見ていたローズは、イングマルに抱き上げられて馬に乗せられ2人乗りで街外れのみんなの所へ急いだ。




馬車で待っていた皆たちと合流し、縛られて命乞いする村人をイングマルは木剣で容赦なく顎の先をなぐりつけ、全員気絶させた。



その後直ぐに出発した。




報復があるかもしれないので、できるだけ村から離れることにし移動し続けた。





みんな黙って傷ついたローズを手当てしていたがローズが「商品として出荷するためなら、もっと大事にしときなさいよ。」そういって、自分でおかしくなって笑い出した。




が、その笑いが狂気を帯びてきて、ローズの魂がどこかに飛んで行ってしまうかのように思えてきた。






そんな時、みんながローズにしがみついて抱きしめ、ローズの魂をひき戻した。




みんな泣きながら抱きしめ、いちばん幼いキャロルまでもがローズの手を握り締めていた。




犬のトミも、ローズの足に手を乗せてローズを心配そうに見ていた。




それを見てローズは我に返り、すぐにまたびーびー泣き出した。




みんなもわんわん泣いて、一行はセミの群れのようにいつまでも泣き止む事はなく移動し続けた。




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