第49話 吟遊詩人2
盗賊たちは金と女と人の悪口でひとしきり盛り上がると再び歩き始めた。
イングマルは彼らの後をつけて行く。
数時間後、山あいの谷の近くの廃屋に入っていった。
こっそりと家の中をうかがうと、留守番と合わせて5人いるようだ。
イングマルはいったん走って馬車のところへ戻り、馬車を走らせて再び盗賊のアジト近くに向かう。
馬車を隠して再び家を見張っていると、朝になってから農民の格好した男が楽器を入れた袋を持って出てきた。
どうやら街へ向かっていくようだ。
イングマルは後をつける。
男は町の市場の方に行き、あちこちの店に寄っている。
盗んだ金品を換金しているようだが楽器だけは売れないのか、手元にいつまでも残っていた。
イングマルはすれ違いざま男の楽器を見せてもらい、売ってくれるように頼んでみた。
男は訝しんでイングマルを見ていたが銀貨5枚だと言ってきた。
他の店でだいぶ安く叩かれたのだろう。
交渉し結局、銀貨4枚で手をうった 。
わざと金袋を見せる。
男は一瞬、鋭い視線を送ってたがすぐ穏やかな農民の顔になった。
金を払うと男は行ってしまった。
イングマルは楽器を布に包んで木箱にかんな屑を入れて衝撃に備えておき、その後別に用事もないのに町の中をぐずぐずうろついて午後遅くなってから街を後にした。
街道から外れ盗賊のねぐら近くの田舎道をゆっくりと行くと、予想通り町を出てすぐ後をつけてくるものの気配を感じた。
すぐに日が暮れてイングマルは野宿することにした。
盗賊のねぐらからはそう遠くは無い。
ボロ布を頭からかぶって焚き火を前に寝たフリをしている。
剣を持った3人に囲まれ「おい!」と声をかけてきた。
イングマルは顔を上げにっこり微笑み「やあ、いらっしゃい」といった。
3人の男がキョトンとして顔を見合わせる。
正面を向き直すと「おい!小僧、命がおしければ有り金出せ!」と言ってきた。
イングマルは3人の顔をじっくり見て「あなた達3人だけですか?」と聞いた。
男たちはまた顔を見合わせて「そうだ。それがどうした。早く金を出せ!」というとイングマルに剣を向けた。
ゆっくり立ち上がってボロ布を脱ぐと、完全武装の姿が現れた。
男たちはイングマルの姿を見て「こいつ!」と言うと一歩さがった。
次の瞬間には正面の男の口の中に太い棒がめり込んだ。
あごが砕け、歯のほとんどが折れてボロボロこぼれおちた。
男は両手で顔を抑えて、声も出せずにのたうちまわる。
2人の男は「やろう!」と叫んで斬りかかってきたが、もうすでにイングマルの姿は見えない。
あたりを見回したとき、男の急所に棒が命中した。
男は白目を剥いて気絶した。
残った1人はそれを見ると「くそっ!」と言って逃げてしまった。
イングマルは2人の男を縛り上げ、持ち物を調べてみたが何も持っていなかった。
イングマルは逃げた男の後を追いに行く。
場所はすでにわかっているので慌てはしない。
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