第46話 鉱山
イングマルの商売の毎日、新しい楽しみが1つできた。
古い壊れた馬車を手に入れたのだ。
普段商売で使っているものは店のものだが手に入れた馬車はイングマル自身のものとして安く知り合いに譲ってもらった。
あちこち壊れているので、暇を見つけては修理している。
普段商売に使っているものと比べれば小型で見劣りするがそれでもイングマルは大喜びである。
丈夫さを保ちつつ軽量化するためあちこち鉋をかけて板を削り、腐りかけた古い材料は新しく取り替えてゆく。
イングマルの新しい焼き印を入れてもらった。
車大工の下に通って作業を手伝いながら、わからないところを教えてもらった。
そんな日々を送っていたある日、叔父の使いである街へ行くことになった。
本来は叔父自身が行くのだがどうしても手が離せないので代わりに行くこととなった。
叔父の商売上重要な場所でこの国でしか産出しない鉱石が出る鉱山街である。
この辺の地域は特殊な鉱石が産出する地域であっちこっちに鉱山がある。
鉱山といっても地表から数メートルのところに鉱床が薄く層をなしているため露天掘りの鉱山である。
スロトニアとの戦争以来、需要が高まりさらなる増産が求められるようになった。
しかしこの土地は優良な農地でもあったため、度々農民と鉱山開発商人とトラブルになっていた。
今回の使いもその関係の書類を届けるのがイングマルの使いだった。
無事用事を済ませて帰り道、小さな村に通りかかると農民一家が男達に叩き出されていた。
家の中からは家財道具などが放り出されている。
イングマルは慌てて止めに入った。
「何しやがるこのガキ!邪魔すんな!」と言ってイングマルに殴りかかる。
ひょいひょいと殴りかかってくるのをかわし、男達を外へ出すと「乱暴はやめて!」といい何事なのか聞いた。
彼らは「ここは領主の土地、鉱山開発のため農民の立ち退きが決まっている。いつまでも立ち退かない農民を追い出している。」とのことだった。
「あてもない農民を追い出すのは、それこそ領主のやることじゃない。
こんなことが王都に知られれば、領主が困るのではないか?」とイングマルは言った。
男達は少しひるんだが「そんな事は俺たちの知ったこっちゃねー。
俺たちは金に雇われただけ。雇われた仕事をこなすだけだ。」という。
イングマルは「では早速、王都に行ってここでの出来事を皆に言って回ろう。」というと、馬車にのって行こうとしたが男達に取り囲まれた。
「そうはいかねー、お前はここでおねんねだ。」というと男達は剣を抜いてイングマルに襲いかかってきた。
イングマルは道端に落ちていた木の棒を拾うと男達を容赦なく殴って回った。
腕や顔を散々イングマルに叩かれ、みな剣を落としていつの間にか逃げてしまった。
農民たちが寄ってきたけれど、皆泣いてばかりいる。
「どうせ、すぐ他の用心棒がやってくるだけだ。」という。
イングマルはどこかに行くあてはないのか聞いてみたが、誰も何もないと言う。
イングマルは「領主のもとへ交渉に行ってみようか?」と交渉役を買って出た。
農民たちは「こんな子供に何ができるのか?」と思ったようで半ばあきらめているようだった。
イングマル自身も「なんでこんな事に首を突っ込むのか?おかしな話だ。」と思っていた。
前の老人の影響か?とも思ったが「交渉するだけで戦闘になるわけではない」と思い領主の館へ向かった。
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