第1151話能登国の歌三首(3)

鹿島嶺の  机の島の  しただみを  い拾ひ持ち来て

石もち つつき破り  早川に  洗ひ濯ぎ 

辛塩に  こごと揉み  高坏に盛り  机に立てて

母にあへつや  目豆児の刀自  父にあへつや  身女児の刀自

                     (巻16-3880)

※鹿島嶺:石川県七尾市東方の宝達山脈。

※机の島:和倉沖の小島、あるいは七尾沖の雌島。

※しだたみ貝:磯でよくみられる小型の巻貝。石川県ではよく見られる貝。

※目豆児の刀自:愛らしい子。「刀自」は、本来は一家の主婦。この場合は幼女を主婦に見立てて、愛しんでいる。

※身女児:未詳。愛らしい幼女の意味と推定。


鹿島嶺近くの机の島のしだたみ貝を拾って来て、石を使ってつついて破いて、流れの速い川で、しっかりと洗って、それを辛い塩できっちりと揉んで、高坏に盛って。お母さんにご馳走はしたの?可愛いおかあさん、お父さんにもご馳走はしたの?可愛いおかあさん。


能登国の古い「童歌」と思われる。

可愛らしい女の子が、浜から巻き貝を拾って来て、石を使って身を取り出して、流れの速い川でしっかり洗い、その後、ゴシゴシきっちりと塩揉み。

それを、お母さんとお父さんに、と歌う。


万葉集の中でも、自然に微笑みが浮かぶ歌と思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る