第1105話中臣朝臣宅守、狭野弟上娘子と贈答する歌(20)

我がやどの 花橘は いたづらに 散りか過ぐらむ 見る人なしに

                      (巻15-3779)

恋ひ死ねば 恋ひも死ぬとや ほととぎす 物思ふ時に 来鳴き響むる

                      (巻15-3780)

旅にして 物思ふ時に ほととぎす もとなな鳴きそ 我が恋まさる

                      (※15-3781)

※もとなな鳴きそ:「もとな」は期待や希望に反して、現実がその通りにならず、不満に思う副詞。そんなに鳴かないで欲しいとの意味になる。


(奈良の)我が家の花橘は、今頃空しく散ってしまったのだろうか、見てくれる人もいないのに。


恋死にしてしまえば、恋も死んでしまうのだろうか、ホトトギスはこんな物思いの時に飛んで来ては、盛大に鳴き騒いでいる。


旅先で、こんな物思いに沈んでいる時に、ホトトギスはそんなに鳴かないで欲しい、ますます私の都への恋しさが強くなるばかりではないか。


中臣朝臣宅守の歌。

ホトトギスに文句を言っても仕方がないと思うけれど、せっかく悩んでいるときに大騒ぎされれば、実際、そうなるかもしれない。

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