第1100話中臣朝臣宅守、狭野弟上娘子と贈答する歌(15)

魂は 朝夕に たまふれど 我が胸痛し 恋の繁きに

                 (巻15-3767)

このころは 君を思ふと すべもなき 恋のみしつつ 音のみしぞ 泣く

                 (巻15-3768)

ぬばたまの 夜見し君を 明くる朝 逢はずまにして 今ぞ悔しき

                 (巻15-3769)

※逢はずまにして:顔を合わせることなく


あなたのお気持ちは、朝な夕なに、いただいておりますが、私の胸は痛くてたまりません、恋心の激しさのために。


この頃は、あなたを思うと、どうしようもなくて、ただ恋い焦がれるだけで、声を上げて泣いているのです。


夜に共寝をしたあなたを、翌朝にしっかりと見ることもなかったことが、今となっては悔しくてなりません。


狭野弟上娘子の歌。

自分の心、自分の状態を、そのまま歌に詠み、後世の人の心も強く打つ。


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