第731話朝霞 鹿火屋が下に 鳴くかはづ

朝霞 鹿火屋が下に 鳴くかはづ 声だに聞かば 我恋ひめやも

                       (巻10-2265)

※朝霞:「鹿火屋」にかかる枕詞。

※鹿火屋:田畑に鹿や猪を近づけないように火を焚く小屋。または、蚊遣火を焚く小屋らしい。


鹿火屋の下で鳴いている蛙のように、せめて声だけでも聞こえるなら、これほどまでに私は恋しくなるでしょうか。


蛙は水の近くに棲むので、鹿火屋もおそらく川の近くにあると思われる。

「鹿火屋」、「蛙の声で、恋を連想する」は、なかなか現代人には実感がないけれど、古代ではその感覚が受け入れられた、と知識の一つにもなるのだと思う。

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