第678話我が恋を 夫は知れるを 行く船の

我が恋を 夫は知れるを 行く船の 過ぎて来べしや 事を告げなむ

                        (巻10-1998)


私が恋しいと思う心を、あの方もわかっているはずなのに、行く船が通り過ぎるようなことがあってもよいのでしょうか、何のお言葉もないのに。


織姫のすぐにでも逢いたいと焦る気持ちを表現している。

天の川を行く船は、他にもあって、通り過ぎてしまった船に、彦星は乗っていなかったのかもしれない。

しかし、逢いたくて焦る織姫は、何の言葉もない、と嘆いてしまう。



また、別の解釈では、愛する夫が別の女の家に行ってしまった。

自分には何も言わずに、通り過ぎた、それを恨み悲しむというもの。



ただ、織姫と彦星の年に一度だけの逢瀬、たまたま彦星が乗っていなかった船が通り過ぎただけで、その後に幸せな逢瀬を果たしたと思うほうが、詩情は高まると思う。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る