第633話霞立つ 春の永日を 恋ひ暮らし

霞立つ 春の永日を 恋ひ暮らし 夜もふけ行くに 妹も逢はめやも

                       (巻10-1894)

※霞立つ:春の枕詞。


霞が立ち込める春の長い一日を、ただ恋い焦がれるだけで過ごしてしまいました。

もう夜も更けていくけれど、あの人に逢えるのでしょうか。


逢うことなど不可能な、恋するだけの男の嘆き歌のような印象。

思う相手には、すでに立派な男がいて(自分は捨てられ)、それでも諦めきれないのかもしれない。

一夫多妻の時代、こんな思いに苦しんだ男性も多かったと思う。



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