第628話冬過ぎて 春の来れば 年月は
冬過ぎて 春の来れば 年月は 新たなれども 人は古り行く
(巻10-1884)
物皆は 新たなる良し ただしくも 人は古り行く よろしかるべし
(巻10-1885)
冬が去り、春が来ると、年や月は新たになるけれど、人はそのたびに古びて行く。
物であれば全て新しいものが良いけれど、人は古びて行くのが良いと思います。
二つの歌は、一対と思う。
一首目の年齢を重ねることへの自嘲落胆に対して、二首目はそうではなく、年齢を重ねれば、相応の良さがあると反論する。
ただ、若い人でも沈んでいる人もあれば、老人になっても輝いている人もある。
その人の境遇か、気持ちの持ち方か。
それでも、年齢を重ねたから古さびて行く、そんな気持ちは持ちたくないのが、大体の人の気持ちなのではないだろうか。
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