第500話やどにある桜の花は 今もかも
厚見王の、久米女郎に贈りし歌一首
やどにある 桜の花は 今もかも 松風疾み 地に散るらむ
(巻8-1458)
久米女郎の報贈せし歌一首
世の中も 常にしあれば やどにある 桜の花の 散れるころかも
(巻8-1459)
厚見王が久米女郎に贈った歌一首
貴方の家の庭の桜の花は、今頃は、松風が強く吹いて、散ってしまっているのでしょうか。
久米女郎が応じた歌一首
人の世は、いつまでも同じということはないので、我が家の桜の花も、散り落ちております。
※久米女郎:伝未詳。万葉集中に、この一首のみ。
女性の家にある桜の花が落ちるのをお互いに惜しむ、それだけでは解釈が浅い。
男は、女の心変わりを心配する。
「強い松風で桜が散る」は、女性の待ち続けてきた心が、何らかの原因、おそらく新しく立派な男の出現で、今までの男に対する心が散ってしまうということを心配する。
その心配に対する女も、強い。
世の中はいつまでも同じではない、つまり私の心も、それと同じ。
とっくに、新しくて立派な強い男に寄り添っております。
ですから、貴方を待ち続けてきた心など、散り落ちてしまいましたと返す。
やはり不実で、訪れがない男は、結局は女に捨てられる。
そんな応答のように思うけれど、これについては、男女それぞれに感慨があると思う。
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