第379話羈旅にして作りき(14)

あさりすと 磯に住む鶴 明けされば 浜風寒み 己妻呼ぶも

                       (巻7-1198)

餌を求めて磯に住む鶴が、夜明けの浜風が寒いのか、その妻を呼んでいます。


鶴が妻を呼ぶのは、朝の浜風が寒いからと詠む作者。

本当に寒いのは、旅先の朝で、妻の温かみを感じない作者なのだと思う。

どれだけの長い旅かわからないけれど、作者は無事に家に戻って、妻の温かみを感じることが出来たのだろうか。



沖つ波 辺つ藻巻き持ち 寄せ来とも 君にまされる 玉寄せめやも

                       (巻7-1206)

沖の波が岸辺の藻を巻き寄せて来ても、貴方以上の宝を寄せることはありえないのです。


少々、歯が浮くような歌に思う。

岸辺の屋敷の宴会での歌なのだろうか。

遊女を口説いているような、戯れ歌のように思える。

これはこれで、あからさまなお世辞で、面白い。



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