第279話蓬客等の更に贈りし歌三首

松浦川 川の瀬光り 鮎釣ると 立たせる妹が 裳の裾濡れぬ

                       (巻5-865)

松浦なる 玉島川に 鮎釣ると 立たせる児らが 家路知らずも

                       (巻5-866)

遠つ人 松浦の川に 若鮎釣る 妹が手本を 我こそまかめ

                       (巻5-867)


松浦川の川瀬が美しく光る中で、鮎を釣ろうと立っている貴方の、裳の裾が濡れているようです。


松浦の玉島川で、鮎を釣ろうと、お立ちになっている貴方の家に行く道がわかりません。


松浦の川で、若鮎を釣る貴方の腕を、私は必ず枕にしたいのです。



蓬客は、漢籍などで旅人のことを譬える表現、つまり大伴旅人の作。

川の中に立って鮎を釣るのだから、当然、裾をめくる。

どれほどめくったのかは不明であるけれど、若い娘の白く輝く脛から、膝やあるいは太ももの一部まで露わになっていることは、想像できる。

川瀬も輝いているけれど、若くて健康的な娘の脚も、濡れて輝いているのだと思う。

すると旅人氏は、この娘が欲しくなってしまった。

だから、娘の家はわからないけれど、家まで行って、共寝をしたいと求婚をする。


宴会時の戯れ歌(フィクション)との説もあるけれど、その説を取ると、いかにも中年以降のオジサンたちの、いやらしさを感じてしまう。

自然に、旅をする人が、川で鮎を釣る娘の健康的な輝く脚を見て、思わず求婚をしてしまったと取ったほうが、ロマンがあると思う。




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