第253話更に大伴宿祢家持の、坂上大嬢に贈りし歌15首(5)

相見てば しましく恋は なぎむかと 思へどいよよ 恋まさりけり

                         (巻4-753)

夜のほどろ 我が出でて 来れば我妹子が 思へりしくし 面影に見ゆ

                         (巻4-754)

夜のほどろ 出でつつ来らく 度まねく我が なれば我が胸 切り焼くごとし

                         (巻4-756)


逢瀬の後、しばらくは恋心の辛さが和らぐと思っていたけれど、より恋心の辛さがまさってしまう。


夜明けのまだ暗い頃、貴方の家を出て来たけれど、貴方の寂しそうに沈む顔が面影に浮かんで忘れられない。


夜明けのまだ暗い頃に出て来ることが重なったので、私の胸は切り裂いて焼いているように、痛く辛く、苦しい。



ここまで思いが深まると、逢瀬だけでは済まされない。

同じ屋敷で寝起きしないと、苦しいまま。

家持は坂上大嬢以外に、これほど心のこもった歌を贈っていない。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る