とおい記憶

その場所は

いろいろな

“ふしぎ”が遊んでた


ふしぎは 甘いものが大好きで


ぼくは持っていた

を小さくちぎって

いっしょに 食べた


それから

ふしぎは

植物に詳しいらしく


高い木の上のほうから

珍しい木の実を採ってきては

ぼくに見せびらかして、笑ってた


でも、機嫌のいいときには

食べきれないほど ごっそりくれた


あの日、ぼくを

いちばん気に掛けてくれてたふしぎに

赤く ふくらみかけの実を

もらって食べた


どこか にも似たその実は 軽く、

せつなく、

すこし甘かった


ことばを話せるふしぎが

その実が ここで


“かなし” と呼ばれているのだと教えてくれた


かなし実を食べて

かなしみを知ったぼくは

もう、

そこに居ることができなくって


でも なんだか清々すがすがしい

さわやかな風に乗って


ふしぎ達も

それぞれ

素敵な顔して

ぼくを

見送ってくれたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る