ガーディアン・ポゼッション

WhiteDog

第1話 新たな憑依者

いつもと変わらない朝

いつも通り学校へ行き、いつも通り過ごし、いつも通り帰る

最近は何も面白いことなんかない

入学したての頃はすぐ喧嘩を売ってくる奴らが多かったのに、【鬼の神口】と呼ばれ、今となってはだれも俺とは喧嘩しない


つまらない…


何か刺激が欲しい、いつもと違う何か…

毎日そう思う日々が続いていた


しかしその日は突然やってきた


いつも通りの帰り道、だったはずの街中に突如響いた女性の悲鳴


神口は咄嗟に悲鳴の方向へ走り出した

人通りのない裏路地へとたどり着いた神口はそこで恐ろしい光景を目にした


真っ黒な瞳。

異常に浮き出た血管。

甲殻のようなものを身に纏い、全身黒い闇に覆われていた。


神口は久しぶりに恐怖を感じた


その異様な生物の前に倒れている女性に目を向けた

「秋本ッ!?」


【秋本 舞】、神口の同級生で幼馴染

彼女が倒れている姿を目撃し、神口は怒りと恐怖を感じた

同時に異常な状況に少し興奮もしていた


「彼女を放せ!」


そう言い放った瞬間全身の力が抜けるような感覚に陥った


声が聞こえる

(彼女を助けたいか)

俺は助けたいと心の中で言った

(何をしてでもか)

俺は何をしてでも助けたいと心の中で叫んだ


その後は自分を客観的に見ているようだった


何が起きているのかわからない

自分が何をしているのかもわからない

勝手に目の前で自分の体が動いている

それも信じられない速さで


その後は何も覚えていない


目が覚めた時には病院の一室だった


「ハッ!神口くん!」


秋本の声が聞こえる

「目が覚めたみたいね!良かったー!」

神口は状況が理解できなかった

「ここ、どこ」

「病院、一昨日の夕方、私と神口くんが路地裏で倒れてたんだって」

神口はあの異様な生物を思い出し再び恐怖を感じた

震える神口を秋本は心配そうに見た

「大丈夫!?」

「あぁ。ありがと」


次の日には二人とも退院した


神口はどうしてもあの生物が気になって仕方がなかった


(最近ニュースになってる憑依が、何とか?ってのと関係あんのかな)


実際の映像を見ることもなければ、写真すら出ていない【憑依者】(ポゼッシャー)だとはあの時は思わなかった


(あの生物もわけわかんないけど、俺に起きたことはなんだったんだ)


自分が【憑依者】だともこの時はまだ思わなかった。

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