四日目
4-1 ターゲットの情報
当初よりのターゲットであるセデイト対象者のパーティが、情報どおりにこの街に来るとすれば、おそらく夜……。間違っても昼前に来ることはないと予測しているセデイターは、深夜の行動も想定して、起床は遅め。寝られるときには寝ておくという臨機応変なタイプのナユカも、その朝寝にお付き合い。
ようやく着替えたふたりが一階へ降りると、当然ながら、すでにオフィスは開いていた。
「朝ごはん……ある?」まだ眠そうなリンディは、控え室にいる世話役に朝の挨拶。「おはよう、アネット」
挨拶の順番が通常と逆。その先の公務員は、もちろん通常通りに稼動している。
「おはようございます、リンディさん、ナユカさん」
「おはようございます」
こちらナユカは、きっちり目覚めている。
「朝食は、すぐご用意いたします。少々お待ちください」
施設管理者兼お世話役は食堂へ。すでに、あらかた準備はできている。
朝食の用意ができる前に、セデイターは情報端末に向かい、例のターゲットの目撃情報を確認する。すでに、今朝、アネットによって最新の状態に更新されているものの、昨日と比べて特に目新しい点はない。対象者パーティーのルートに変化がなく、そのままのペースでこちらへ向かっているのなら、この街に到着するのはやはり夜だろう。基本的にゆっくり進んでいるが、途中でなにかをやらかしていれば、さらに遅れて、夜半以降になるかもしれないし、最悪、こちらへは来ないかもしれない。そして、セデイト対象者の一般的な性質から、その可能性も低くはない。ともあれ、行き先を変えずにこちらに来るとすれば、まだ時間の余裕がある。行き先を変えた場合は、追いかければいい。それだけの話だ。よって、今は待機とする。
食事の仕度はすぐに整い、リンディとナユカは遅めの朝食の席に着く。定時起床のアネットは、とっくに朝食は終えているので、用があったら呼ぶように申し置いて、控え室へと席を外す。暇とはいえ、職務に忠実な彼女としては、勤務時間中に一緒にお茶を飲んで駄弁っているというのはどうにも気が引ける……そうしたいのはやまやまではあっても。それに、昨日のように聞かれたくない話もあるかと思い、ふたりに気を遣ったというのもある。もっとも、そのような気遣いは、食事中はまじめな話はしないことにしているふたりにとっては、さほど意味のないことではあったが。
しばらくして、出された料理をきっちり平らげたリンディが、控え室の仕切り越しに声をかける。
「ねー、アネット。昨日買ったやつ、食べたいんだけど」
昨晩の夕食後に、食道楽はまた、別のスイーツを買っていた。
「あ、はい。今、お出しします」
世話役は、しまっておいたブツと、皿を二枚だけ持ってくる。
「あれ? 二枚?」
足りない皿を指指し数えるナユカ。そして、察したリンディからの誘惑。
「一緒に食べない?」
「いえ、わたしは……」
職務中につき、遠慮する公務員……というのは建前であり、気になるのは本当はカロリーのほう。それというのも、目の前のふたりのせいだ。一人は均整の取れたグラマーで、もう一人は引き締まったスレンダー。アネットは概して標準的な体型だが、ふたりと自分の体型を対比すると、どうしても意識してしまう……。それでも、現物を目の当たりにして、食べたいという衝動がじわじわと涌き上がってくるのは罪だ。
「ま、いいじゃない」さすがというべきか、その衝動を察知した食道楽は、さっさと取り分けて自分用の皿に乗せ、躊躇するアネットの前に。「どうぞ」
少しだけ逡巡したものの、欲望に白旗を揚げる。
「……で、では……その……お皿を持ってきます」
敗北の結果、足りなくなった皿を取りに向かう。まあ……あそこまでされて断るのは失礼だし……付き合うのも世話役としての職務のうち……。ということで、自分自身の説得には勝利した。
昨日同様、甘味で締めた朝食後、リンディは片付けの済んだアネットを席に呼び、改めて今後の予定を告げる。
「今夜、ターゲットのパーティが街に来ると思うんだけど、あたしが出てる間、ユーカを預かっててくれる?」
「わたしは連れていってもらえないんですか?」
割り込んだナユカを、セデイターが制する。すでに彼女の中での決定事項だ。
「危ないからね。終わったら戻ってくるよ」
「……はい」
同意するまで、少しの間があった。迷子の異世界人としては、自分が置かれた状況をかんがみれば、リンディからは一時的にでも離れたくはない……とはいえ、仕事の邪魔になるのは避けたい……。
返事を受け、セデイターは世話役に再度頼む。
「それで……いいかな? アネット」
「承知しました」
「ありがと。……で、情報屋が来るのは夕方だよね」
昨晩の顔合わせの際、オフィスへの来訪をアネットの権限で要請しておいた。魔法省との関係を深める思惑があちらにはあるだろうから、初対面のフリーランスが頼むよりも確実だ。
「ええ。特になにもなければ、その頃に」
夕方……は、微妙な時間だ。リンディがそうセッティングしたのは、情報屋による新たな情報の取得をぎりぎりまで引っ張るため。それでも、できれば、もう少し早めに情報がほしい。というのも、セデイターとしては、巻き添え被害を避けるためには、極力街中ではことを起こさず、当該パーティが街に入ってくる手前で迎え撃ちたいのだが、夜という予想よりも彼らの到着が早まれば、夕方頃には先回りして街を出る必要があるかもしれないからだ。ともあれ、今しばらくは、待機するほかはない。
昨晩接触した情報屋からの新報を待ちつつ、リンディはしばらくのんびり待機していたものの、さすがに手持ち無沙汰だ。何の知らせもないのは、件のパーティの進路に変更がないことを示唆しているのだが、その確証があるわけではない。夕方前に向こうからこちらへわざわざ知らせに来るのは、よほどはっきりとした変化があったときだけだろう。そもそも、こういったそれ相応の速報性を要する情報は、待っているだけでは手遅れになりがちだ。
そこで、やはりいつものように、セデイター自らが出向いて情報を集めることにする。終わったら街で昼食をとるため、本人の希望に基づいてナユカが同行。その後、異世界人はここへ戻って、アネットと残ることとなる。
さて、街で情報収集といっても、昨晩寄った情報屋の拠点になっているパブは、夕方開店につき、まだ営業前。それに、「拠点」といっても、彼らがそこに常にたむろしているというものではなく、通常、街へ散らばっている。この街の情報屋の事情をまだ知らないリンディが、こんな外が明るい時間に彼らに接触できそうなところは、バウンティハンター向けのギルドあたりだろう。
その前に、まず、街中とその周辺の地理関係をより詳しく把握しておくために、旅行者への案内所へと向かう。そこでは、ごく普通の旅行者へ各種施設や危険情報などの案内をしており、いわば「堅気」な施設だ。よって、それを越えた類の情報はない。その方面は基本的にお門違いなので、情報屋もいなさそうだし、見つかるべくもない。こういったところにいるのは情報屋ではなく、ガイドだけだ。
昨日、あちこち回ってみただけではわからなかった部分を補うべく、詳細な地理情報をできる限り頭に入れたあと、次に向かったのは、規模こそ違えど、たいていの街にはある賞金稼ぎ用のギルド。ただ、これらのギルドは、賞金が公的機関から出されることが多いにもかかわらず、概ね、捜査当局には表向き協力的ではない。なぜなら、先にそちらに捕まえられては元も子もないからだ。ゆえに、それらの機関に対しては、ギルドが情報提供の便宜を図ることは建前としてはない。昨晩のアネットのように公務につく者が情報屋と接触――といっても、直接情報のやり取りをするわけではなく、あくまでも紹介するのみだが、その際、ギルドを経由しないのはそのためだ。しかしながら、彼らとて公的機関、主に捜査当局から情報を得る必要性もあり、それら双方の情報流通には、情報屋が大きく関与している。
そのような事情がどうあれ、フリーランスの賞金稼ぎは、個人として情報屋に接触すればよいが、セデイターにとっては大きな問題がある。それは、情報屋がセデイト関連の情報を基本的に扱っていないことだ。それもそのはずで、そもそも強制セデイト対象者への賞金は、魔法省のみがかけており、現状、いまだ絶対数の少ないセデイターだけがそれを得ることができる。犯罪者として賞金首となっていない限り、一般のバウンティハンター向けに賞金がかけられてはいないわけだから、当然、ギルドでは扱っていない。よって、それらの情報への需要は少なく、わざわざその情報を集めようという奇特な者はあまりいない。
今回のケースもそれに当たり、そういったものを扱っているのは、昨日接触した魔法省推薦の情報屋のみである。したがって、セデイターは、ギルドにおいては、情報屋などがなにかのついでにたまたま入手した情報を聞き出すしか手がなく、これは、手間が掛かるのみならず、さほど有効でもない。とはいえ、多少なりとも新たな情報が得られればめっけものなので、とりあえずやっておくことにする。
ギルド窓口で、たまたまその場にいた情報屋を紹介されたリンディは、ナユカを少し離れた場所で待たせて接触する。いちおうセデイト対象者の名前と外見やパーティー構成などを伝えてはみたものの、案の定、有用な情報は得られない。そこで、セデイターは探りを入れてみる。
「なんか、派手にやらかしてるみたいなんだけど」
これまでのところ、やらかしてはいても、実害があまりないという奇妙な状況である。そのため、一般向けの賞金がかかっていない。
「派手にねぇ……。あんた、セデイターだよねぇ」
再確認してきた情報屋。なにかあるのか? リンディは期待と警戒を半々に抱く。
「……そうだけど」
「そうか……だったら……」なにかを思い出そうとし始めた。そして、少しの
「ほんと? たぶんそれ。こっち来てる? 位置は?」
「こっちに向かっているらしいが、場所はなぁ……。もしかして……昨晩、突然雷があちこちに落ちるのを見たって奴がいたが……まさかな」
雷魔法は、戦場用の上級魔法である。広域にランダムで落ちるので、自然現象と区別がつきにくい。正気ならその辺で使うものではない。
「それはどこ?」
「街道沿いの平原のほう。ここから半日くらいだな」
「そっか、ありがと」
セデイターは情報の内容に見合っていそうな金を見せる。こういうのはだいたい相場ものだ。この程度ならこのくらいで納得するだろう……。ところが、情報屋は受け取ろうとしない。
「こんないい加減な情報で金は取らねぇよ。代わりに……」
「代わりに?」
身構えるリンディ。彼女に対して「代わりに」という言葉が使われるとき、たいてい、男は不愉快な要求をしてくる。よって、戦闘準備。その体が横向きになり、右ひじが後ろに引かれる。それを意に介さず、情報屋が身を乗り出す。
「ちょっとだけ、な……」
「!」
ほら、来た。美女の物理臨戦態勢は整った。あとは発動のみ。
「……聞きたいことが」
情報屋の口が開かれると同時に、リンディがひじとともに体を回転させ……。あ、間違えた……情報の交換か。とっさに振り上げたひじを下ろすべく、腋を締める。体は無為に半回転。
「……っと」
バランスを崩しそうになったセデイターに、情報屋が驚く。彼にしてみれば、突然の奇妙な挙動でしかない。
「ど……どうした?」
リンディは、慣性に従ってくるっと一回転。
「な、なんでもない……ちょっと……滑っただけ」速やかに体勢を立て直して正対すると、ばつが悪いので間を空けずに質問を促す。「で、なにを聞きたいの?」
「実は、おととい、ある魔導士がセデイトされたんだが……。ジャバジャ……いや、バジャバル=ジャバジャ、じゃない、ジャジャバラールっていう」
出た。また出た、その名前……こんなところで。呪いかよ……まったく。セデイターは、げんなりして相槌を打つ。
「……ああ、はいはい。で?」
「知ってるのか?」
「あー……名前はね。アバウトに。あんなだから」
相手の意図がまだ読めないため、自分がセデイトしたことは隠しておく。
「そうなんだよな……なんとかしてほしいぜ、あの名前。何度舌噛んだことか、ったく」吐き捨てる情報屋。ここにもあの名前の被害が及んでいる。「それはともかく、奴は魔法省にいるのか?」
「そうなんじゃない。ふつうは、魔法省の病院だね」
自分が送ったんだから、間違いなく、そこ。
「そうか。どのくらいで正気に戻る?」
「人によるけど……長くて二週間くらいかな」バジャバル程度なら。「なに? なんか用なの?」
「金を貸しててな……ま、情報料のつけだが」
「ふーん。忘れてなきゃいいけど」
あんなのに貸すとはね……人がいいのか、甘いのか……。まあ、中途半端な情報では料金を取らないくらいだから、こいつは良心的なのかも……。リンディは、少しはまともに対応してやろうかという気になった。
「忘れる? やっぱりそうか」
「忘れるっていうか、覚えてないってことよ。瘴気のせいで細かいことに気が回ってないから」肩をすくめるセデイター。「証文はあるよね?」
「もちろんあるが、それが問題でな……。見てくれるか?」情報屋は懐からバジャバルの借用証書を出して、署名の部分を指差す。「この署名なんだが……読んでみてくれ」
署名? いやな予感がする。できれば見ないで済ませたくなったリンディだが、出されてしまったからには、目を通さないわけにもいかない。
「バジャジャル……ジャバラジャール」ややこしいので、ゆっくり発音。「これが?」
いちおう疑問形で聞いてはみたものの、もう落ちは見えた。
「名前が違うんだよ。正しくは……」ここで、メモを取り出した貸主は、同様にゆっくり読み上げる。「バジャバル=ジャジャバラール、だ」
「……はぁ」やっぱりそれだ。うんざりしたリンディは、ため息。またかよ……まったくもう。「ま、いいんじゃない。だいたい合ってれば」
もう投げやり。それに対し、貸し手の語気が強まる。
「そうはいくか。証文だぞ」
「あたしに言われてもねぇ……」
借用証書を携帯しているくらいだから、困っているというのはわかるけど……。
「すまん。そうだよな……」
しおれる情報屋。署名を見たときに、セデイターの目に入った金額は、安くはなかった。おそらく、調査依頼でも受けたのだろう。必要経費も含んだ請求だと思われる。
「とりあえず、訴えればなんとかなるんじゃない? 相手の状態は証明できるでしょ。魔法省にいるんだから」
「そう思うか? それじゃ、セデイトしたやつにも証言してもらうか……」
腕組みをして考え始めた貸主の前で、あせる張本人。ああっ、面倒なことに……やぶへびだ。余計なアドバイスなんかしなきゃよかった……ばれる前に逃げよう。
「……そ、そうね。人を待たせてるから、あたしはこれで」
あわてて立ち去ろうとするリンディ。
「おお、そうか。ありがとな」情報屋は、早々に踵を返したセデイターに声をかける。「なんかわかったら教えるよ」
「了解」
ひやひやしながら、リンディは振り向かずに手を挙げた。「なんかわかったら」というのは、どっちのことだろう。ターゲットのことか、バジャバルのことか……。ま、いいか……どうせもう会うことは……なければいいけど……できれば。
そんなことを気にかけながら、待たせていたナユカのほうへ急いで向かったところ、視線の先のショートカットは……男に話しかけられている……危険? いや、あれはたぶん……。
ああっ、もう。いらついたリンディがずんずん近づくと、男がブロンド美女に視線を向け、ナユカに「君のお姉さん?」とか聞いている。
「いえ、違います。あれは……」
スレンダー娘が答える前に、男はセクシー美女にベタな文句。
「やあ、君……どこかで会ったことある?」
「ない。全然ない。まったくない」
ナンパ決定で、リンディの完全否定。事実、ない。そこへナユカが状況説明。
「この人、わたしが生き別れた妹に似ているとかで……」
「それも、ない。全然ない。まったくない」
再び、完全否定。こっちは、実際どうなのかは知らないので、正確には99.99……パーセント違う。
「あ、でも……」
ナユカはなにか言いたげだが、リンディはイラついている。ボケてるの? 「異世界人」でしょうが、あんたは。……違うの? 自分でそう言ったんじゃない。突っ込みは心中に収め、「ブロンドの姉」は「生き別れた妹」の肩に手を乗せる。
「じゃ、さようなら、二枚目さん」
男への皮肉を一言残し、押すように連れを連れ去るブロンド美女。そのまま、無言でギルドの外へ出たところで、ナユカが不機嫌な同行者に声をかける。
「あ、あの……」
「まったくもう、ベタなナンパじゃないの」
リンディは肩から手を離し、押すのをやめる。その異世界人は、「ナンパ」というセレンディ語の単語は知らなくても、状況から意味は推察できている。
「ええ……そうですよね……」
そもそも、自分がナンパ男の「生き別れた妹」なら、リンディを「君のお姉さん」かと聞いてくるのはおかしい。もしそうなら、奴の姉でもあるのだから。
「なに? わかってるの? そんなにナンパされたい?」
募るリンディのイライラ。
「いえ……そうじゃなくて……」
「しっかりしてよね。ああいうところには危ない奴もいるんだから」
セデイターの語気は強め。さっきの奴はそんな感じではなかったけど、注意喚起は必要だ。この
「はい……すみません」
ナユカは素直に謝り、しばらくふたりは無言のまま歩く。沈黙を破ったのはリンディ。
「まぁ、断るのも難しいのかな……」自分なら即刻断るが、ふつうはああいう場所でのトラブルは避けたいか……戦闘慣れしてないだろうし……。そもそも、彼女を放置していた自分の判断もよくなかった。「でも、あたしがいるんだから……困ったらすぐに来てよ」
「はい、そうします……」
なんとなく返事に覇気がない……ちょっと怒ったからかな? そのくらいで落ち込むタイプだとは思えないけど……。このまま気まずいのも嫌なので、リンディは予備知識を話しておく。
「ちなみに、セレンディアでは、ナンパするときには『生き別れの』なんとかって、声を掛けることがよくあるんだけど……」
異世界人かはともかく、この迷子は、少なくともこの国の人ではなかった……ということは……。
「あ。そうなんですか?」
当然、知らなかったと。
「必ずそうするってわけじゃないけど、よくある」なんでそうなったかは、このセレンディア人も知らない。話しかけるきっかけということだろうか。「まぁ、決まり文句ってやつ? 実際には『生き別れ』なんて滅多にないから、それを言ったらナンパってことね」
にやっと笑うリンディ。
「ですよね……」その傍ら、異邦人は納得しつつも真顔だ。「あの……実は……」
「なに?」
「えーと……その……」話そうとして躊躇するナユカ。実は、例の「夢」によく出てくる人物に、外見の雰囲気が似ていた……。明らかに別人ではあるが。「ちょっと……そうですね……考えがまとまったら、そのときに話します」
話は中断。
「そう?」こういうのは、それなりに気になる……。とはいえ、聞いたら聞いたで面倒を背負い込む可能性も少なくない。なにか、複雑な話なのだろうが、もしかしたら、さっきの状況に関わっているのだろうか……。それなら、むしろ、知らないほうがいいのかも……その手の……男がらみの話は得意じゃないし……。プライベートをやたらに突っつくのは趣味じゃない。「……それじゃ、まぁ……お昼、食べに行こ。遅めだけど」
やはり、それよりも食事であった……。食道楽はぶれない。ほっとして見つめるナユカの表情に、笑みが戻った。
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