年末年始と雪の結晶

雪竹葵

プロローグ

1. ノート

 あの出来事から数日が経過した。

 絶対に忘れてはいけない、かけがえのない六日間。

 ある少女との出会いから始まった物語。

 今でも夢ではなかったのだろうかと疑うような出来事だったが、確かに俺の記憶にはっきりと残っている。

 机の上にあるものが、その証拠だ。

 それは、ヘアピン。雪の結晶の一種である樹枝六花じゅしろっかの形をしている。

 樹枝六花のヘアピンは少女のもの。それを見ていると、一緒に過ごした日々と共に少女の容姿、声、仕草が鮮明せんめいに思い出される。

 俺は記憶が色せないうちに書き記しておこうと思い、机からノートを取り出す。

 そしてシャープペンで次のように冒頭に書いた。

『これから記すのは、実際に俺が体験した出来事である。信じ難い出来事だが、確かに俺は体験した。このノートは、その出来事を忘れないように作成したものである。最後までしっかりと目を通して欲しい』

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