童話「猫と亀」

@SyakujiiOusin

第1話

            童話「猫と亀」

                               百神井応身

 皆さんは、なにどし生まれでしょうか?

 干支(えと)と呼ばれる生まれ年には、12の動物があてられています。


 昔々のことです。

 いつもいつもけんかばかりしている動物たちを見て、神様はこまっていました。

そこで神様は、動物たちをまとめるリーダーをつくることにしました。いろいろ考えて、一年交代での持ち回りにすることにしました。

「お前たちのリーダーを決めることにした。年が明けた元旦に、一番早く北の高い山にいるわたしのところに挨拶に来た者を最初のリーダーにする」というお触れを出しました。

「その後は、毎年入れ替わりにして順番に十二匹の動物だけをリーダーにしていく」ということも、多くの動物たちに伝えました。

 ひるねをしていた猫は、それを聞き逃してしまったので、近くにいたネズミに尋ねました。

「“元旦”に神様のところに挨拶にいくんだよな?」

 するとネズミは、「違うよ猫さん。元旦はゆっくりするものなのだから、二日の朝に挨拶に行くんだよ」と嘘を教えました。

「あぁ、そうなのか二日なのですか。ありがとうネズミさん」と、猫はそれまでまだ時間があるので、ゆっくり寝ることにしました。

 しかし、ほかのどうぶつたちは、元旦に一番乗りするために準備しました。

 からだが小さくて、いっぱい走らなければならないネズミや、歩きの遅い牛は、大みそかの夜のうちから神様の元へ出発することにしました。

 走りつかれてしまったネズミは、そばを通った牛の広い背中の上にこっそりと飛び乗り、牛の上で眠りました。

 朝方になって、神様がお待ちになっている門の前にくると、ネズミはさっとおきあがり、牛の前に飛び降りて一番乗りで門をくぐってしまいました。

 それに続いて牛、トラ、ウサギ、龍、ヘビ、ウマ、ヒツジ、サル、鶏、犬、イノシシの順番で、神様に挨拶を済ませました。

 ウサギも、亀とかけくらべしたときのように油断して失敗はしませんでしたから、4番目には到着しました。

「カメさんはどうしたのだろう?姿を見なかったけれど」と、ウサギはまだ来ない亀の心配しました。


 翌日のことです。頑張って二日の朝一番に神様の元へ訪れた猫なのですが、

「何をしておったのじゃ!もうきのうで締め切りは終わりじゃ。顔を洗ってきなさい」と神様にしかられてしまいました。

 ですから、締め切りまでに間に合わなかった猫は、十二匹の動物の中に入る事が出来ませんでした。

 それ以来、猫は暇さえあればしょっちゅう顔を洗うようになり、騙したネズミを嫌って、見つければ追いかけるようになりました。


 ではカメさんはどうなったでしょうか。

 あゆみのおそいカメさんは、あきらめないでいっしょけんめい歩きつづけたのですが、到着したときにはもう、しめきりは終わってしまっていました。

 真っ黒になったカメさんをみて、神様がいいました。

「よく、あきらめないでがんばった。これから帰るのは大変だから、ここでこのまま北を守る玄武(げんぶ)になりなさい」とおっしゃいました。

 玄(げん)というのは、黒いといういみです。北を守る神様になったのです。

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