徒花達の初詣

※本作も朗読キャスで読まれることを想定して書いているので、セリフ前に人物名を記載しております。

 またキャラ紹介も今回のに合わせてご用意しましたので、併せて御覧ください。


※こちらを朗読キャスしてくださるのは、山田弁天斎さま(@yamabenten)です!

 https://kakuyomu.jp/users/yamabenten

 大明神の美声に酔いしれろ!!


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 二年参りからの初日の出、なぁんていう所業は、もうこの歳になるとそれなりにキツい。

 アネモネの営業も30日までだったし、今年は明けてからの初詣にしましょうと、予定のないメンバー数人で、駅の西口で待ち合わせをしているところなの。

 時間は19時。外で待つにはなかなかにツラいんだけど……


レイ 「おっそいわねぇリリ」

テディ「もう置いてっちゃう? 場所は分かってるんでしょお?」

ユッキー 「あ、来ましたよ」

リリ 「おまたせぇ~」


 そんなに慌てた風でもなくパタパタと駆け寄ってきたリリは、悪びれもせずに「てへっ」と笑いやがった。

 あんたがそんなのやってもかわいくないのよオカメインコが!


テディ「リリ遅ぉい、何やってたのぉ?」

リリ 「ごめぇん、来るときモアイのとこで歌ってたお兄さんが超カワイくてぇ~」

レイ 「あんたほんっとバンドマン系好きねぇ」

テディ「つかさー、毎回毎回貢いで尽くして捨てられるのに、こりないよねぇ」

リリ 「だぁって~、さっきのお兄さんお正月休みにわざわざ地方から出てきて頑張ってるって言うからぁ~」

レイ 「はいはい。ほら行きましょ」


 今日集まったのはこの四人だけ。あとはみーんな海外だの温泉だのへそれぞれ旅立ってしまった。

 羨ましくなんかないわよ? あたしは今朝までに行ってたからね。もちろんこの子達には言えないけれど。


リリ 「あれ? ジュリちゃんはぁ?」

ユッキー 「姉さんとハワイ行ってる」

リリ 「えぇーユッキー置いてかれちゃったのぉ?」

レイ 「こぉらリリ」


 まったく。身内と仲良くできてるんだからいいことじゃないの。

 普段は毎日一緒だからこんな時くらいはって、むしろ後押ししてあげたユッキーを誉めてやりなさいよ。


テディ「いつ帰ってくるんだっけ?」

ユッキー 「明後日の夜っすよ」

リリ 「お土産なにかなぁ~」


 そんな風にわいわいと他愛ない話をしながら目的の神社まで歩いて向かう。

 道すがら屋台も見えてきて、人も増えてきた。


レイ 「リリあんたどっかで飲んできた? フラフラしてなぁい?」

リリ 「だぁいじょーぶよママぁうぎゃ!!」


 言った矢先にリリは、苔むした鳥居にごんっと大きな音を立ててぶつかり、うずくまってしまった。

 ほら見なさいよ。


テディ「大丈夫ぅ?」

リリ 「いってぇ……目から星出てる……」

レイ 「ほら立ってリリ、邪魔になっちゃうわよ」

リリ 「はぁい」


 まるで子供みたいねぇ。まぁそれがこの子の持ち味なんだけど。

 バネか何かのようにピョコっと立ちあがったかと思えば、今度は屋台にきょろきょろ目を奪われている。

 工事済みとはいえ元は男の体だものね。あれくらいは何ともないみたいで、ホッとしたわ。


 少し並んで参拝を済ませてから、まずはおみくじ。

 願いごと? ……本当の神様達を知ってしまったからねぇ。今年もよろしくってご挨拶だけしておいたわ。


ユッキー 「お、大吉だ」

リリ 「ねぇこれ何て読むのぉ?」

ユッキー 「みずのえ

テディ「お、ユッキーすごぉい」

レイ 「じゃあこれは?」

ユッキー 「かのえ

リリ 「すげ~!」


 それぞれ引いたおみくじを結んだら、さぁ! お楽しみの屋台巡りよ!

 やっぱりねぇ、楽しくなっちゃうのよねぇ~!


リリ 「あった射的! ねぇあのお財布取ってクマ子ぉ」

テディ「テ・デ・ィ!!」

ユッキー 「あれ偽モンだろ……」


 茶系の市松模様や、Fの文字が組み合わされた某ブランド財布なんかが飾られた射的屋台に全員で並び立ち、三発五百円という暴利を支払いガチな顔つきになる。

 射的屋台は実は毎年恒例行事なの。いいこと? これは真剣勝負よ。


テディ「撃ち方用意! ぇ!!」


 スパパパパン! と軽い音を立てて四人それぞれの獲物を狙い撃つ。

 だけど取れたのはクマ子だけ。さっすがサバゲー歴10年のベテランは違うわねぇ。


リリ 「クマ子すごぉい! ねぇじゃあ次あれ! お財布!」

テディ「自分で取んなさいよ」


 そう言いつつもクマ子は、今取れたパンダのぬいぐるみをリリに渡してあげていた。

 そして追加千円撃ち切ったところで結果発表。


ユッキー 「優勝、テディさん!」

テディ「当っ然よぉ~」


 リリもあたしも、ひとつも取れなかったの。

 ユッキーはなんだかたんぽぽの綿毛みたいなのが入ったキーホルダーをひとつ取っていた。


テディ「さて、じゃあ次どこ行く~?」

リリ 「あ、大福売ってる~! やだぁこれラムレーズン味だって美味しそ~」

レイ 「お餅もあるの? あたしきなこ~」

ユッキー 「毎年餅を喉につまらせて亡くなるお年寄りがいるっていいますよね」

レイ 「なにが言いたいのかしらぁユッキー」

テディ「てめぇもそのうちそうなるんだよユッキー」


 もぐもぐと食べ歩きながら神社を出て、さてととクマ子が伸びをする。


テディ「飲み行く~?」

リリ 「行く~!」

レイ 「お鍋食べたぁい」

ユッキー 「いいっすね鍋。カニ行きましょうカニ」

レイ 「このメンバーで行ったらお店のカニ無くなっちゃわないかしら?」

テディ「海鮮ならあん肝あるとこね!」

リリ 「やったぁ~糖尿になっちゃう~」

レイ 「海鮮が一番よねぇ」

リリ 「海の一番はカニだけどぉ、陸一番ってなぁに?」

ユッキー 「すき焼きだろ常考じょーこー


 こんな風に騒がしく新年を迎えられるのも、もう毎年のこと。

 幸せなことよね。本当、みんなに出会えてよかったなって心底思うわ。


リリ 「ママ、今年のおせちどこのやつ?」

レイ 「いつもの料亭のやつよ」

テディ「あたしあのおせちの椎茸好きなのよねぇ」

ユッキー 「俺昆布」

リリ 「えぇ~栗きんとんでしょ!」

レイ 「ユリ根もいいのよねぇ」


 んふふ。願わくば、また来年もその先も、ずっとこうして楽しく新年を迎えられますように。

 改めて、明けましておめでとう。今年もよろしくね、みんな。



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