ちょーうん! 4-1 

趙雲ちょううんの敗北によって失敗した北伐。

と言って、馬謖ばしょくがヘタこいて

大ゴケしたのもこの北伐なんすけどね。


単純に言えば、第一次北伐、

本命が馬謖の狙った街亭がいてい

陽動が趙雲の率いた箕谷きこくだったっす。

で、街亭が大ゴケ、責任者の馬謖は処刑。

いわゆる、泣いて馬謖を切る、っすね。

箕谷もコケたけど、損害は軽微。


だからその辺りについて、諸葛亮しょかつりょう

鄧芝とうしに漏らした愚痴、というか質問が、

趙雲別伝に残ってるっすよ。


「街亭は、崩れた軍勢を立て直せなかった。


 しかし箕谷の軍勢には、

 そもそもろくに被害もなかった。


 ここには、どういう違いが

 あったのだろうな」


鄧芝が答えるっす。


「趙雲どのがしんがりに立たれました。

 なので軍資や輜重なども捨てることなく、

 将兵らも損なわれなかったのです」


馬謖ェ……。




雲別傳曰:亮曰:「街亭軍退,兵將不復相錄,箕穀軍退,兵將初不相失,何故?」芝答曰:「雲身自斷後,軍資什物,略無所棄,兵將無緣相失。」


雲別傳は曰く:亮は曰く:「街亭の軍の退きたれば、兵は將に復た相い錄さんとせず、箕穀が軍の退きたるに、兵は將に初にして相い失わず、何の故にか?」と。芝は答えて曰く:「雲が身の自ら斷ちたる後、軍資、什物、略ぼ棄つる所無く、兵は將に緣を相い失いたる無し」と。




ここで鄧芝が趙雲を諱呼び捨てしているところにちょっと触れる。呼び名の丁寧さグレードは官名>あざな>諱だ。基本的に目上以外の人間からの諱呼ばわりは、相手を侮辱しているにも等しい。……のだが、多少立場の上下があったとしても、共通の上役に対して同僚を語る時には、諱呼びが通常のようだ。このパターン、世説新語でもちらちら見かけた。


地味にこの辺を小説で再現できると面白そうだなーとか思う。「おい鄧芝のやつ趙雲諱呼びしてんぞ! これ鄧芝が趙雲のことバカにしてたってことじゃねえの!」的トラップを仕掛けてニヤニヤできる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る