第16話
一時間ほど見て回った時に不意に由香里が惹きつけられる様に一軒のジュエリーショップに入って行った、他の物には目もくれずある指輪の前で立ち止まったつまみ上げ観察している、俺も何故かその指輪に惹きつけられた。
「これがいいな由香里はどう思う?
「私これに一目惚れしたみたい」
と言うので店員を呼び在庫はあるか確認しお互いの指が何号か図ってもらった。在庫はあると言うのでこれを買うちゃんとした箱に入れてくれと頼んだ。
少し高かったが現金で払い店を出た。
「帰るぞ」
「うんまた来ましょ、楽しかったわ」
と言い腕を組んでくる。
「早く指輪がはめたいわ」
「帰るまで我慢しろ」
と言い車に乗り込み家まで帰った。
帰ると俺は指輪を取り出し。
「事件が片付いたら俺と結婚してくれ、これは婚約指輪だ」
箱を開け渡した
「喜んでお受けします」
と言った由香里は大泣きしながら抱き付いてくる。
「やっと言ってくれた、やっと結婚できる」
と泣きながら騒いでいる。
俺は指輪を取り出し指にはめてやった。由香里も俺の手を取り指輪をはめてくれた。
「これでもう嫌な夢は見ずに済むだろ?」
「そうね大丈夫よ、ありがとう」
と指輪を見ながら言った。
コーヒーを飲みながら大事そうに指輪を撫でている。チャイムが鳴り俺が応答するカードが届いたようだ判を押し受け取る。三枚揃った記載事項に間違いがないか確認し財布に入れた。
由香里はいつまででも指輪を眺めている、夕飯の準備を始める様子もない。記念日はレストランと覚えてしまった様だ。
二人でレストランに趣き、ウェイターが来ると指輪を見せ。
「今日は本当に大事な記念日なんだ、婚約したんだ」
と言うと。
ウエイターは満面の笑顔で。
「おめでとうございます、こちらへどうぞ」
席へ案内された。
「豪華な料理で祝いたい、適当に見繕ってくれ」
「わかりましたお待ち下さい」
暫くすると料理がどんどん運ばれて来る。
大きなチキンの丸焼きが真ん中に置かれ、他はフランス料理の様な料理が沢山並べられた。飲み物はシャンパンだろうか、ワインではなかった。
「豪華ねこんな料理が出てくるとは思わなかったわ」
「俺もだ、まず乾杯しようじゃないか
乾杯をするとシェフがやって来てチキンを切り分けてくれた、チキンの中にも何か料理が詰め込まれていた。
「ごゆっくりどうぞ」
チキンから食べた、丸焼きではなく照り焼きだった、味が染み込んでいて美味かった。食事が終わるとケーキが運ばれてきた。
一時間程掛けて食事をし、会計はカードを初めて使った。
今日は一日中由香里は嬉しそうだった。
家に帰りコーヒーと豆乳を飲みながら、他愛ない話をして一日が終わった。
夜中にトイレに行った、由香里の寝顔を見たが嬉しそうな寝顔だった、指輪を買ってやって正解だったようだ。もう一度眠りについた。
またアラームで目が覚める、由香里も起きてくる。
「今朝は悪い夢を見なかったわ、あなたのお陰ね」
「指輪を渡してよかったよ」
「昨夜からずっと考えてたんだけど、事件が終わったら引退することに決めたわ、もうあなたの貯金と私の貯金を併せるととんでもない金額ですもの、これ以上増えても使いみちが思いつかないわ」
「お前が、そう決めたのならそれでいいんじゃないか?」
「今日は事務所に連れて行って貰ってもいいかしら?」
「いいぞ、何時でも構わないよ」
「朝食何にする?」
「軽くスパゲティーがいいな」
「すぐ用意するわ」
俺も一緒に寝室から出た、俺は先日から癖になっている銀行の残高を確認してから豆乳を飲みにキッチンへ行った。
食事が終わると由香里が。
「午前中に行きましょ、事務所が暇な内に行っておくわ」
「わかった、準備しておくよ」
由香里も片付けが終わると、出掛ける準備をしていた。すぐに終わり。俺の車で事務所に向かった、途中で銀行に寄り事務所前に車を止めた。中に入ると山本が嬉しそうに出迎えてくれた。
「荒木さん、一気にお金持ちになった気分はどうです?」
「複雑な心境だよ」
「早速車も買い替えた様ですね」
「ああ、自分へのプレゼントだ」
事務所の社員が何人いるかを数える七人だった」
「山本さん、上手く動いてくれたお礼だ、少ないがみんなで分けてくれ」
と先ほど下ろした百万円の入った封筒を渡す。山本は中を確認すると。
「仲介手数料は戴いてるので結構ですよ」
と言って返してこようとしたが。
「ボーナスだと思って受け取ってくれ、元々あの土地の権利書は捨てようとしてたんだ」
由香里も山本に話す。
「受け取って頂戴、成功報酬よ」
「わかりました、有難く頂戴します」
やっと受け取ってくれた。
「みんな注目、荒木さんから特別ボーナスを戴いた。後でみんなに配るぞ」
みんなが歓喜の声を上げ礼を言ってくる。
「駅前の土地も売れたから私からのボーナスも今月の給料に上乗せしておくわ」
ありがとうございますと皆が口を揃えて言っている、皆上機嫌だ。
「それと私、昨日この人と婚約したわ」
皆が指輪に注目した。驚きの声が上がる。
「山本さん、ちょっといいかしら」
「はい、時間はあるのでいいですよ」
「私はもう使い切れないほど稼がしてもらったわ、私が今巻き込まれている事件をこの人が終わらせてくれたら結婚して仕事も辞めようと思ってるの、山本さんに会社を譲ろうと思ってるんだけど、どう?」
山本は驚いた顔をしている。
「私が社長になるという事ですか?」
「そうよ、不満かしら?」
「いえ、ありがたいお話ですが社長名義の物件はどうなさるつもりですか?」
「最優先で売却して頂戴」
「社長がいないとどうしていいかわかりません、会長として残って貰えませんか?」
「わかったわ、給料はほとんど要らないわ」
「わかりました、ありがとうございます」
「私が居ても居なくても山本さんなら出来るわ、それに結婚したら子供を産んで仕事どころじゃなくなりますもの、話はそれだけよ今日は帰るわ」
「わかりました、お気をつけて」
山本は外まで見送りに出てきた。
俺は手を挙げ発進させた。
「まだ由香里名義の物件があるんだな」
「ええ、でも数はしれてるわ大したお金にならないわ」
「本当に辞めてしまってもいいんだな? 未練はないのか?」
「お金はもういいわ、あなたの貯金も併せると孫の代まで遊んで暮らせるわ」
「そうだな、用事はもうこれだけなのか?」
「ええ、終わったわ。スッキリしたわ」
「ならいい」
「これからどうする?」
「もう帰りましょ、お腹が空いたわドーナツ屋があれば寄って頂戴、甘いものが食べたい気分なの」
帰り道にはないはずだ、ちょっと道を外れドーナツ屋に寄った。
家に帰り昼食はドーナツにする事にした。
食べながら会話をする。
「そう言えばお前と毎日の様にレストランに寄ったりして結構食ってるが、運動もしてないのに太る気配も無いな」
「私、太らない体質みたい、昔からよ」
「俺と一緒だな」
「ところであなたの今日の予定は?」
「今日は何もないが本屋に行きたい」
「私も行くわ」
「食ったら行こうか」
「そうしましょ」
流石に駅前だ大抵の店が並んでいる、近くの大きな本屋に入り小説や雑誌を大量に買い込んで家に帰った。
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