第12話
斎藤に三日待つと言ったが山中の携帯を取り出し電源を入れてみる。いつもの様にすぐ着信はなかった、後二日待てばいいんだ。電源を切った。
「後二日で何とかなるのかしら?」
「斎藤は何とかなるかもしれないと言ったんだ、一応信じてやるつもりだ。かなり俺に恐怖を覚えたみたいだしな。明日にでも進展を聞いてみるつもりだ」
「ところで、あなたの土地が凄い金額で売れたらどうするつもり?」
「まず、車を買い替えるよ。今のクラウンはお下がりでもらった車で、ちょうど車検も近いしな。お前のポルシェみたいに外車を買おうか迷ってる。自分で整備したいから整備し易いスポーツカーに憧れがあるな」
「あの土地が売れれば、何でも買えるわ、車の話をしてる時あなた目が輝いていたわ。よっぽど車が好きなのね」
「ああ、だから整備士の仕事を選んだくらいだしな」
「何か会社を立ち上げて商売をしたり経営する気はないの?」
「今のところ考えてないな」
「そう、やっぱりのんびり二人で過ごしましょ、買い替えた車で毎日ドライブするのも悪くないわね」
「お前はポルシェを持ってるがあまり運転したがらないな、あんないい車なのに」
「自分で運転するのが苦手なのよ」
「ポルシェは癖が少ない上にスピードも出るから楽しいと思うがな、俺はポルシェは好きだぞ、整備も楽だしな」
「ベンツはどう?」
「ベンツは興味ないな、ありふれてるし。成金やヤクザと思われるのも嫌だしな」
「確かにベンツはありきたりよね」
「やっぱり土地が売れるまで考えないことにするよ、もししょぼかったら虚しいだけだしな」
「大丈夫よ、必ず高値で売れるわ私が保証するわ。山本さんも凄いって言ってたでしょ」
風呂の沸いたメロディーが流れた。
二人で入り疲れを癒やした。
由香里が体を洗い出したので、俺も体を洗う、髪を洗おうとしたら由香里が洗わせてと言うのでシャンプーをしてもらった、散髪屋にいるような感じがした。
風呂からあがると散髪をしたくなった。
「由香里、散髪をしたいんだが短くしてもいいか?」
「いいんじゃない? 男性は短髪の方が私は好きだわ。飽きてもすぐに伸ばせるでしょ?「一度思いっきり切ってみるのもいいかもしれないわ、あなたは似合うはずよ」
「わかった、いい散髪屋は近くにあるか?」
「私の通ってる美容院に行ってみる?」
「上手く切ってくれればどこでも構わない」
「私も毛先を少し切りたいから、明日行ってみましょ」
「ああ、美容院は初めてだ一緒に行ってくれると心強い」
「まだ開いてるから予約を入れておくわ」
由香里は電話を入れた。
「こんばんは、姫野です二人分の予約をお願いするわ、もう一人は男性よ。えっ、ちょっと待ってもらえる?」
由香里が俺に尋ねる。
「あなた、パーマじゃなかったら今空いてるらしいけどどうする?」
「よし、今から行こう」
由香里は携帯を耳に当て。
「じゃあ今から行きます。姫野と荒木です」
「早速行きましょ、待たせたら悪いわ」
素早く着替え急いで歩いて行く。
「いらっしゃいませ、あら姫野さん早かったわね。こちらがお連れの荒木様ですね」
二人並んで座らされた。
「私はいつもよりもう十センチ程短くして頂戴、あの人は思い切ってばっさり短くしてくれていいわ、そうね横と後ろは刈り上げて上はワックスで遊ばせる感じでお願いするわ」
「本当にいいのですか?」
「ああ、構わない思いっきりやってくれ」
バリカンで横と後ろを刈り上げていく、上はハサミで容赦なく切られて行く、向かいの鏡の俺は丸坊主に近い状態だ、十分程で出来上がった短くしすぎたかなと思ったが自分から言いだしたことだ、後悔はしていない、髪を洗い乾かすとスポーツ刈りに近い短さになっていた。乾かすと終わりだった。
「ワックスで遊ばせる感じと聞いたがどうやるんだい?」
「実際にワックス付けてみましょうか?」
「ああ、一回見ておきたい」
「この長さだとこうやって立たせるか、こうやって流すか二種類出来ます」
「いいね、気に入ったこれから暫くこの髪型にするよ」
「記録を残しておいたので次回からは前回と一緒と言ってもらえば結構です。今はワックス落としておきましょうか?」
「頼むよ、風呂上がりなんでね」
「あなた、似合ってるわよ」
「姫野さんが男の人を連れてくるのって初めてじゃないですか?」
「初めての彼氏よ、一緒に住んでるのよ」
「おめでとうございます、じゃあ結婚する予定ですか?
「そのつもりでお付き合いしてるのよ」
俺は二度目の洗髪を終え席を離れた。由香里も終わったようだ。
料金は由香里が払ってしまっていた。
「お待たせしました、ありがとうございました」
店を出た
「ありがとう、次は俺が出すよ」
「わかったわ、で頭どう?」
「頭が軽くなったし、気に入った」
「さっきまでの髪型よりこっちの方が断然いいわよ、ワックス買って帰りましょ」
途中のコンビニで硬めのワックスを購入した。
帰ってまたコーヒーを飲んだ。
「お前も結構切ったな」
「本当は肩くらいまで切りたいんだけど、勇気がないの」
「ロングもいいが似合うと思うぞ」
「今度挑戦してみるわ」
「ポニーテールが似合う長さにしてくれないか?」
「ポニーテールが好きなの?」
「ああ、好きだ」
「わかったわ、覚えておくわ」
大きな欠伸が出た
「早めに寝ましょうか」
「そうしよう、眠くなってきた」
よく考えればここ二日ほどあまり寝てない気がする、いつ何があるかわからない、寝れる時に寝ておいた方がいいだろう。ベッドに潜り込むとすぐに眠りに落ちた。
アラームの鳴る前に目が覚めた、ぐっすり寝れたみたいだ気分がスッキリしている。
由香里を起こさないよう静かにベッドから抜け出す、冷蔵庫から豆乳を取り出しコップに注いでリビングに持っていく。
タバコを吸いながら清々しい朝日を拝む。
今日か明日には斎藤が動くだろう、失敗したら俺が痛めつける、成功すればいずれ島村に気付かれ江口に襲われる事になる。どちらにせよ痛い目にあうのは火を見るよりも明らかだ。
部屋を見渡す、そう言えばこの家にはエアコンが付いてないのにいつも快適だ、天井に会社とかでよく見かける空調が付いている、流石豪華な一流マンションだ。
由香里が慌てた感じで寝室から飛び出してくる、俺を見て落ち着いたようだ。
「目が覚めたらあなたがいなくて。出ていったのかと思って心配したわ」
「俺の帰る場所はここだけだと言っただろ、黙って出ていったりしないから安心しろ」
俺の隣に座り手を握ってくる、握り返す。
「きっと変な夢を見たせいね、あなたがお前には飽きたって言って他の女と一緒に出て行く夢よ」
「あり得ないな、だが逆のパターンもあるかもしれないと俺は心配だがな」
「それこそあり得ないわ」
「それなら俺は安心だ」
「私も少し安心したわ」
「今朝はカルボナーラが食べたい」
「わかったわ、ちょっと待ってて」
由香里はまだしょげているようだ、食べ終わる頃には戻っているだろう。豆乳を飲み干した。
「出来たわこっちへ来て」
テーブルに向かい合って座る。
フォークに巻きつけて食べる。由香里はまだ手を付けない。
「食わないと元気も出ないぞ」
やっと食べ始めた。
俺は先に食い終えたが由香里はまだ食べている。
「今朝気付いたんだがエアコンが付いて無いんだな」
「そうよ、各部屋に空調が着いてるから快適でしょ」
「一流のマンションは金がかかってるなと感心してたんだ」
「私はエアコンが苦手なの、だからここに決めたのよ交通の便もいいからね」
ようやく由香里の笑顔が戻ってきた。
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