第4話
「晩ご飯どうする」
「忙しかったから用意出来てないわ」
「ちょうどいい同棲記念にレストランに行こうか?」
「いいわね、そうしましょ」
「ハニーズでいいか?」
「ええ、歩いて行けるから好きなだけお酒も飲めるわね」
二人で歩いてレストランに向かった、由香里が手を繋いでくる、握り返す。
レストランに着くと昨日と同じ初老のウエイターがやって来た。
「いらっしゃいませ、昨日も来ていただきましたね?」
「よく覚えてるね、今日は記念日なんだ、いい席を頼むよ」
「そうですかサービスさせてもらいます、こちらへどうぞ」
窓際の席に案内された、ここは駅近くだと言うのに少し丘の様になっていて自然が豊かだ。窓から庭が見渡せる。
「失礼ですが、どの様な記念日ですか?」
「同棲記念日なんだ」
「それはおめでとうございます、ご注文をどうぞ」
「俺は超レアのステーキとカルボナーラを」
「私も同じでいいわ」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
窓からのライトアップされた景色を見ていると。
「これ渡すの忘れてたわ、今のうちに渡しておくわね」
と言って家の合鍵を渡してきた。
「ありがとう」
ステーキが運ばれて来た。いつもと違うステーキだと見ただけでわかる、かなり分厚くて柔らかそうだ
「私、食べきれるかしら?」
頂きますと言い食べ始める。思った通り凄く柔らかい、舌の上で溶けるような食感だった。由香里も驚いている。
「何これ、口の中で溶けていくわ」
「高級なブランド物の和牛だな」
カルボナーラも運ばれてきた。
「私もうお肉入らないわ、あなた食べてちょうだい、私はスパゲティを戴くわ」
俺は平らげたステーキ皿を由香里のと入れ替えぺろりと食べた。カルボナーラはいつもの味だったがこっちも美味かった。
「もうこれ以上入らない」
「私もよ」
談笑していると皿が下げられ、ワインが運ばれて来る。
「ワインは注文していないが」
「こちらはサービスでございます」
「あのさっきのステーキがサービスじゃなかったのか?」
「あちらもサービスの極上和牛です、主に記念日用に仕入れております」
ワインが注がれる、二人で乾杯しグラスをあわせる。
「飲みやすいワインね」
「これも高そうだ」
飲み終えると帰り支度を始め、会計を頼んだが、あまりの安さに驚いた。万札を出し、残りはチップだと言うと喜んでいた。
「またのご来店をお待ちしております」
帰りは手じゃなく腕を組んできた。
どこから見ても仲の良いカップルに見えるだろう、気分は良かった。
マンションに着いても由香里は鍵を出さない、俺に開けろとでも言っている様だ。先程渡された合鍵を使い部屋に入る。
「ただいま」
と言うと、後ろから抱きしめられ。
「おかえりなさい」
と泣きそうな声で言ってくる。
「どうした急に」
「こんな急展開で私のワガママを聞いてくれてありがとう、あなたに出会えて幸せよ」
「まあ、多少強引だったが結果オーライだ、俺もお前に出会えて幸せだ」
由香里が落ち着いたので部屋に入る。
「コーヒータイムにしましょ」
「俺のコーヒーは大きなマグカップで入れてくれ」
「わかったわ、この大きさでいいかしら?」
手に持ったマグカップを見る。
「ああ、ちょうどいい大きさだ」
二人でくつろぐ。
「そう言えば由香里お前、今朝から俊輔さんじゃなく、あなた、になってるな」
「その方が親近感があって良くない? いつまでも俊輔さんじゃおかしいわ。それにあなたもたまに、お前、って読んでるわよ」
「嫌なら止めるが」
「ううん、嬉しいからお前でいいわ」
何かのメロディーが鳴った。
「お風呂が沸いたわ」
「先に入っていいぞ」
「一緒に入りましょ」
少し迷ったが今更裸を見られても恥ずかしくはない。
「ああ、いいぞ」
「脱衣所で服を脱ぎシャワーで軽く汗を流してから湯船に浸かる。風呂がかなり広いので二人で入っても十分なスペースだった。
「背中流してあげる」
体を洗っているとそう言われた、黙って背中を向ける、子供の頃親にされたっきりだ、懐かしい感じがする。
「俺も流してやろう」
由香里はロングの髪を結ってアップにしているので楽だった。
「何かいいわね」
「俺は懐かしい感じがしたよ」
「私もよ」
シャワーで泡を流してやる。
二人で風呂から上がりパジャマに着替え、並んで歯を磨いた。
「これからも一緒に入ってくれる?」
「俺は構わないが」
「じゃあ決まりね」
由香里は嬉しそうに微笑んでいる。
「ここに住んでから八年間、男がいなかったって聞いたが学生時代はどうだったんだ? 正直にいうがお前はかなりの美人だモテないハズがない」
「うーん、モテたのは事実だけどまともに付き合った人はいないわ、付き合った瞬間にお金を貸してくれとか、いきなりホテルに行こうとかお金か体目的なのよ、その日の内にすぐに別れたわ」
「って事は昨日は初体験だったのか?」
「そうよ、あなたでよかったわ」
「荒っぽく扱ってしまったな、すまん」
「気にする必要はないわ、私も嬉しかったんだから。何か愛されてるって感じが凄くよかったわ」
「それならよかった。ところでベッドルームを見たことが無いんだが見てもいいか?」
「そこの部屋よ」
開けると清潔感のある広い部屋だった。ベッドはダブルベッドだ、これなら窮屈な思いはしないだろう。
「どう? 何か気になる事でもあった?」
「ないね、チャラチャラした部屋じゃなくてよかったよ」
「私はシックな色合いが好きなの、それにぬいぐるみとかも置かないわ」
「気に入った」
「ありがとう」
「ウイスキー置いてるか?」
「あるわよ、私も飲むわ」
ウイスキーをちびちびと飲みながら他愛もない話で盛り上がった。
お互い酒に強い方じゃない、酔が軽く回って来る。
「今日はいろいろあったし、そろそろベッドに入るか?」
「そうね」
リビングの明かりが消えた。二人でベッドに潜り込む。
寝心地の良さそうなベッドだ、快眠出来そうだと考えていると、緊張した顔で覆いかぶさってきた。何度もキスをされる、パジャマも脱がされた。由香里も裸になっている。由香里から求められるのは初めてだった
由香里はどうしていいのかわからない顔付きになったので反対に押し倒し応えた。
何度も抱いた俺も由香里ももう限界だったそのまま横になる。睡魔が襲ってくる。
「ありがとう、愛してるわ」
その声に反応しようとしたが気付けば朝になっていた。
起き上がると服を来てリビングに入る。由香里が朝食の準備をしていた。
「おはよう」
と言葉を交わし、由香里を背後から抱き締める。
「昨夜は言いそびれたが、俺も愛してる」
由香里は器用にくるっとこちらに向き直り涙目で見つめてくる。
「やっとちゃんと言ってくれたわね、ありがとう愛してるわ、幸せにしてね」
「ああ、わかったよ。パンが焦げるぞ」
慌ててトースターからパンを取り出す。
二人で朝食をとり、リビングでコーヒーを飲んだ。
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